癌性心膜炎による心タンポナーデを発症した胃癌術後再発の1例

症例は68歳,男性.10年前に胃癌に対し幽門側胃切除術が施行された.2年前に胃癌再発による多発骨転移を指摘され,S-1療法が開始された.食思不振と全身倦怠を主訴に外来受診し入院となった.精査で心嚢液貯留による心タンポナーデ,右心不全と診断され,エコーガイド下心嚢液ドレナージ術が施行された.排液は血性であり,細胞診はclass Vであった.チューブドレナージのみで症状は軽快し,チューブ抜去後も心嚢液の再貯留は認めず退院となった.退院後は化学療法を行わないことを希望されたが心嚢液の貯留を認めることなく経過し,心タンポナーデ発症後約12カ月目に永眠された.癌性心膜炎による心タンポナーデはoncolo...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 76; no. 4; pp. 762 - 767
Main Authors 辰巳, 満俊, 中谷, 充宏, 中出, 裕士, 小川, 護仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2015
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.76.762

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Summary:症例は68歳,男性.10年前に胃癌に対し幽門側胃切除術が施行された.2年前に胃癌再発による多発骨転移を指摘され,S-1療法が開始された.食思不振と全身倦怠を主訴に外来受診し入院となった.精査で心嚢液貯留による心タンポナーデ,右心不全と診断され,エコーガイド下心嚢液ドレナージ術が施行された.排液は血性であり,細胞診はclass Vであった.チューブドレナージのみで症状は軽快し,チューブ抜去後も心嚢液の再貯留は認めず退院となった.退院後は化学療法を行わないことを希望されたが心嚢液の貯留を認めることなく経過し,心タンポナーデ発症後約12カ月目に永眠された.癌性心膜炎による心タンポナーデはoncologic emergencyとして緊急処置を要する疾患であるが,胃癌の術後再発として発症することは稀である.軽微な症状を主訴とする場合もあり,担癌患者に対しては常に念頭に置くべき疾患であると考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.76.762