免疫性血小板減少症を合併した超高齢者の急性 A 型大動脈解離に対し上行弓部大動脈置換術後,基部再解離に対し再手術を施行した1例

免疫性血小板減少症(ITP)を基礎疾患に持つ高齢者の急性A型解離に対して上行弓部大動脈置換術を施行したが,術後約1カ月で中枢断端形成再解離のため大動脈基部置換術を要した症例を経験したので若干の考察を加えて報告する.症例は86歳,女性.高度僧帽弁閉鎖不全症を指摘されていたが,高齢でITPがあるため手術不能とされていた.2014年10月に背部痛を自覚し,前医の胸腹部造影CTにて急性A型大動脈解離と診断され,当院に救急搬送となった.来院時の心臓超音波検査にて高度AR,高度MR,中等度TRを認め,手術は上行弓部大動脈置換術,僧帽弁形成術,三尖弁輪縫縮術を施行した.中枢はBioglueを用いて偽腔を閉鎖...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 45; no. 1; pp. 57 - 61
Main Authors 菊先, 聖, 田中, 啓之, 橋本, 圭司, 明石, 英俊, 高瀬谷, 徹, 平田, 雄一郎, 和田, 久美子, 古野, 哲慎, 赤須, 晃治, 飛永, 覚
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2016
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.45.57

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Summary:免疫性血小板減少症(ITP)を基礎疾患に持つ高齢者の急性A型解離に対して上行弓部大動脈置換術を施行したが,術後約1カ月で中枢断端形成再解離のため大動脈基部置換術を要した症例を経験したので若干の考察を加えて報告する.症例は86歳,女性.高度僧帽弁閉鎖不全症を指摘されていたが,高齢でITPがあるため手術不能とされていた.2014年10月に背部痛を自覚し,前医の胸腹部造影CTにて急性A型大動脈解離と診断され,当院に救急搬送となった.来院時の心臓超音波検査にて高度AR,高度MR,中等度TRを認め,手術は上行弓部大動脈置換術,僧帽弁形成術,三尖弁輪縫縮術を施行した.中枢はBioglueを用いて偽腔を閉鎖し,フェルトサンドイッチによる断端形成を行った.いったんは術後91時間で人工呼吸器から離脱した.しかし,術後30日目頃より聴診上拡張期雑音の増強を認め,心不全症状が出現した.心臓超音波検査にてARの増悪,造影CTにて大動脈基部の解離を認めたため,術後39日目に大動脈基部置換術を施行した.術中所見では中枢断端形成部の直下に横走するエントリーを半周性に認めた.RCA周囲にも解離が及んでおり,RCAへのバイパス術を施行した.術後の病理所見では再解離とBioglueの因果関係はあきらかではなく,再解離の原因としては組織の脆弱性や手技上の問題が考えられた.初回手術から121日目に独歩にて転院となった.2回の手術において血小板輸血をそれぞれ50単位ずつ要したが,血小板輸血にて術中の止血に難渋はしなかった.術後2回心嚢ドレナージを要し,心嚢液貯留とITPとの関連は否定できないと考えられた.今回術後30日目に大動脈基部の再解離を発症した.診断のきっかけは往復雑音の増悪であり,ICUでは疎かになりがちである聴診などの基本的身体所見の経時的観察の重要性を再認識した.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.45.57