右半球損傷により声音性失音楽を呈した非音楽家の 1 例─歌唱時のピッチ表出障害

声音性失音楽を呈した非音楽家の 1 例を報告する。症例は 81 歳右利き女性で, 右半球梗塞後に歌唱能力が低下した。dysarthria や dysprosody は伴っていなかった。頭部 MRI では, 右中心前回の皮質・皮質下を中心とし, 島中央部, 中前頭回後端部皮質, 上側頭回内側皮質の一部に及ぶ脳梗塞を認めた。本例の障害特徴を抽出し発現機序および病巣との関連を検討するため, 本例と対照群 8 例に対し音楽受容面と表出面の検査を実施し比較した。結果, 本例は音楽受容面に成績低下は認めなかったが, 音楽表出面ではピッチ表出に異常を認め, 対照群にはみられない目標音よりも低いピッチへの平板...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 39; no. 3; pp. 364 - 372
Main Authors 岩﨑, 久留実, 塚本, 能三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 30.09.2019
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Summary:声音性失音楽を呈した非音楽家の 1 例を報告する。症例は 81 歳右利き女性で, 右半球梗塞後に歌唱能力が低下した。dysarthria や dysprosody は伴っていなかった。頭部 MRI では, 右中心前回の皮質・皮質下を中心とし, 島中央部, 中前頭回後端部皮質, 上側頭回内側皮質の一部に及ぶ脳梗塞を認めた。本例の障害特徴を抽出し発現機序および病巣との関連を検討するため, 本例と対照群 8 例に対し音楽受容面と表出面の検査を実施し比較した。結果, 本例は音楽受容面に成績低下は認めなかったが, 音楽表出面ではピッチ表出に異常を認め, 対照群にはみられない目標音よりも低いピッチへの平板化傾向を示した。このことは本例が運動障害や音楽受容障害に起因しない歌唱時のピッチ表出障害を呈している可能性を示しており, 本例の主病変である右前頭葉の運動関連領域と右島中央部領域が, 歌唱時のピッチ発声コントロールに関与している可能性が考えられた。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.39.364