食道癌に対する食道亜全摘・胸骨後経路再建後の食道裂孔ヘルニア嵌頓の1例

患者は83歳,男性.1年前に食道癌に対し経裂孔的非開胸食道根治切除・胸骨後経路胃管再建を施行し,無再発経過観察中であった.倦怠感・腹痛を主訴に近医を受診し,呼吸状態の悪化を認め,食道裂孔ヘルニア嵌頓の疑いで当院搬送となり緊急手術を施行.術中所見で,食道裂孔をヘルニア門とし右胸腔内への横行結腸の脱出を認めた.裂孔部を切開し嵌頓を解除したが虚血性変化を認め,横行結腸部分切除・人工肛門造設術を施行.食道裂孔は再度縫合閉鎖した.食道癌術後の食道裂孔ヘルニアの報告は散見されるが,多くは後縦隔再建後の傍再建臓器ヘルニアで,胸骨後経路再建後の報告は極めて稀である.発症要因として,組織の脆弱性や肝外側区域の低...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 78; no. 4; pp. 682 - 686
Main Authors 岡本, 和真, 小西, 博貴, 松本, 辰也, 大辻, 英吾, 塩崎, 敦, 藤原, 斉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2017
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.78.682

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Summary:患者は83歳,男性.1年前に食道癌に対し経裂孔的非開胸食道根治切除・胸骨後経路胃管再建を施行し,無再発経過観察中であった.倦怠感・腹痛を主訴に近医を受診し,呼吸状態の悪化を認め,食道裂孔ヘルニア嵌頓の疑いで当院搬送となり緊急手術を施行.術中所見で,食道裂孔をヘルニア門とし右胸腔内への横行結腸の脱出を認めた.裂孔部を切開し嵌頓を解除したが虚血性変化を認め,横行結腸部分切除・人工肛門造設術を施行.食道裂孔は再度縫合閉鎖した.食道癌術後の食道裂孔ヘルニアの報告は散見されるが,多くは後縦隔再建後の傍再建臓器ヘルニアで,胸骨後経路再建後の報告は極めて稀である.発症要因として,組織の脆弱性や肝外側区域の低容積などが挙げられ,術中所見では裂孔部は狭く強固であったが,外側区域により覆われていなかった.胸腹腔内にはほとんど癒着を認めず,腹部HALS操作や非開胸手術による胸腹腔内の癒着軽減も一因と考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.78.682