血清および嚢胞液中CA19-9が異常高値を示した胸腺嚢胞の1例

症例は70歳,女性.左乳癌,胃癌術後の経過観察中にCA19-9が4,339U/mlと急上昇した.自覚症状はなかった.CTにて前縦隔に20mmの嚢胞性腫瘤を認めた.内部に隆起性病変はみられなかった.FDG-PETにては集積を認めず良性胸腺嚢胞が疑われた.他には明らかな病変はみられなかった.胸骨縦切開により摘出術を行った.大きさ40mmの多房性の嚢胞で周囲への癒着,浸潤はなかった.内容液は淡黄色,清でCEA 73,400ng/ml,CA19-9 17,020,000U/mlと異常高値であった.病理組織学的検査では胸腺嚢胞の診断で悪性所見はなかった.免疫組織学的検査では嚢胞上皮はCA19-9に陽性,...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 78; no. 3; pp. 462 - 466
Main Authors 松岡, 永, 甫喜本, 憲弘, 山井, 礼道, 谷田, 信行, 浜口, 伸正, 黒田, 直人, 藤島, 則明, 頼田, 顕辞
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2017
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.78.462

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Summary:症例は70歳,女性.左乳癌,胃癌術後の経過観察中にCA19-9が4,339U/mlと急上昇した.自覚症状はなかった.CTにて前縦隔に20mmの嚢胞性腫瘤を認めた.内部に隆起性病変はみられなかった.FDG-PETにては集積を認めず良性胸腺嚢胞が疑われた.他には明らかな病変はみられなかった.胸骨縦切開により摘出術を行った.大きさ40mmの多房性の嚢胞で周囲への癒着,浸潤はなかった.内容液は淡黄色,清でCEA 73,400ng/ml,CA19-9 17,020,000U/mlと異常高値であった.病理組織学的検査では胸腺嚢胞の診断で悪性所見はなかった.免疫組織学的検査では嚢胞上皮はCA19-9に陽性,CEAに陰性であった.術後,速やかに腫瘍マーカーは基準値以内に低下し,再上昇はみられていない.胸腺嚢胞液中の腫瘍マーカーは高値のことが多いが,血清中の腫瘍マーカーが上昇することは極めて稀であり興味深い症例と思われた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.78.462