脾静脈切離を伴う膵頭十二指腸切除術時の遠位脾腎静脈吻合による脾静脈再建

脾静脈切離を要する膵頭十二指腸切除術では,切離した脾静脈再建の要否について一定の見解がない.縫合閉鎖でよいとする報告もあるが,脾静脈を切離することで左上腹部の鬱血が生じるため血行再建を必要とする報告もある.非再建症例の中には,左側門脈圧亢進症を生じ消化管出血や脾腫を認め臨床上問題となる症例が一定の割合で存在することは事実である.そこで,今回われわれは鬱血予防に何らかの脾静脈減圧処置が必要であると考え,遠位脾腎静脈吻合を付加する術式を2例行った.術後造影CTでは,吻合部の開存は良好であり鬱血を示唆する所見は認めなかった.本術式はもともと食道静脈瘤に対する術式であるが,食道静脈瘤手術と比較し元来の...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 78; no. 4; pp. 638 - 642
Main Authors 尾川, 諒太郎, 財間, 正純, 原田, 英樹, 山本, 秀和, 矢澤, 武史, 山本, 道宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2017
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.78.638

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Summary:脾静脈切離を要する膵頭十二指腸切除術では,切離した脾静脈再建の要否について一定の見解がない.縫合閉鎖でよいとする報告もあるが,脾静脈を切離することで左上腹部の鬱血が生じるため血行再建を必要とする報告もある.非再建症例の中には,左側門脈圧亢進症を生じ消化管出血や脾腫を認め臨床上問題となる症例が一定の割合で存在することは事実である.そこで,今回われわれは鬱血予防に何らかの脾静脈減圧処置が必要であると考え,遠位脾腎静脈吻合を付加する術式を2例行った.術後造影CTでは,吻合部の開存は良好であり鬱血を示唆する所見は認めなかった.本術式はもともと食道静脈瘤に対する術式であるが,食道静脈瘤手術と比較し元来の門脈圧亢進症はなく脾静脈の剥離は最小限で十分なため手技的に比較的容易であった.よって,脾静脈切離を要する膵頭十二指腸切除術において,遠位脾腎静脈吻合付加は左側門脈圧亢進症予防に有効な術式であると示唆された.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.78.638