術後硬膜外カテーテル抜去時に生じた硬膜外血腫の1例

症例は74歳,女性.膵頭部IPMNに対し,硬膜外麻酔併用全身麻酔下に膵頭十二指腸切除術を施行.術前に止血・凝固能異常は認めず,抗凝固・抗血小板剤も使用.麻酔時,硬膜外カテーテルは問題なく挿入留置された.創痛の治まった術後7日目に硬膜外カテーテルを抜去,直後から強い背部痛を認め,30分後にはTh6以下領域の感覚脱失を伴う対麻痺をきたした.画像検査にてTh6-10に脊髄の圧迫を伴う硬膜外血腫を認め,緊急の椎弓切除術を施行.手術所見ではTh6-10相当部分に硬膜外血腫を認め,血腫を除去したが明らかな出血源は認めず.術後,背部痛は消失し,感覚脱失はTh11まで改善し坐位保持は可能となったが,対麻痺は残...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 78; no. 4; pp. 859 - 863
Main Authors 久保, 維彦, 山田, 大作, 江口, 英利, 藤野, 裕士, 森, 正樹, 土岐, 祐一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2017
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Summary:症例は74歳,女性.膵頭部IPMNに対し,硬膜外麻酔併用全身麻酔下に膵頭十二指腸切除術を施行.術前に止血・凝固能異常は認めず,抗凝固・抗血小板剤も使用.麻酔時,硬膜外カテーテルは問題なく挿入留置された.創痛の治まった術後7日目に硬膜外カテーテルを抜去,直後から強い背部痛を認め,30分後にはTh6以下領域の感覚脱失を伴う対麻痺をきたした.画像検査にてTh6-10に脊髄の圧迫を伴う硬膜外血腫を認め,緊急の椎弓切除術を施行.手術所見ではTh6-10相当部分に硬膜外血腫を認め,血腫を除去したが明らかな出血源は認めず.術後,背部痛は消失し,感覚脱失はTh11まで改善し坐位保持は可能となったが,対麻痺は残存しておりリハビリを継続している.止血・凝固能異常などのリスクがない患者に,硬膜外カテーテル抜去時の急性硬膜外血腫という,重篤かつ予想困難な合併症を経験したので報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.78.859