膵管走行を術前に把握し膵頭十二指腸切除術を行ったI型門脈輪状膵の1例

症例は69歳の男性.糖尿病にて前医通院中に胆管拡張を指摘され,当院へ紹介となり,遠位胆管癌(cT1aN0M0,Stage I A)と診断された.術前CT所見では門脈は膵実質に囲まれ,主膵管(Wirsung管)は門脈の背側を,副膵管(Santrini管)は門脈腹側を走行しており,I型門脈輪状膵と考えられた.遠位胆管癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術中,膵頭部を門脈系から分離するために門脈腹側の膵実質を切離し,副膵管が同定された.膵頭部切除のため膵床の授動を尾側に進め,門脈輪状膵癒合部尾側の膵体部を切離し,主膵管を含んだ一面の膵切離端とした.術中所見はI型門脈輪状膵に矛盾しない所...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 5; pp. 971 - 977
Main Authors 吉田, 瑛司, 山口, 洋志, 今村, 将史, 永山, 稔, 瀬川, 惠子, 杉田, 真太朗, 木村, 康利, 竹政, 伊知朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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Summary:症例は69歳の男性.糖尿病にて前医通院中に胆管拡張を指摘され,当院へ紹介となり,遠位胆管癌(cT1aN0M0,Stage I A)と診断された.術前CT所見では門脈は膵実質に囲まれ,主膵管(Wirsung管)は門脈の背側を,副膵管(Santrini管)は門脈腹側を走行しており,I型門脈輪状膵と考えられた.遠位胆管癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術中,膵頭部を門脈系から分離するために門脈腹側の膵実質を切離し,副膵管が同定された.膵頭部切除のため膵床の授動を尾側に進め,門脈輪状膵癒合部尾側の膵体部を切離し,主膵管を含んだ一面の膵切離端とした.術中所見はI型門脈輪状膵に矛盾しない所見であった.残膵再建はBlumgart変法による膵管空腸吻合にて施行した.術後は膵液瘻等の合併症なく経過し,術後9カ月無再発生存中である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.971