左半側口腔内に特異的な症状を呈した脳梗塞の1 症例 ~口腔内左半側空間無視の可能性

右中大脳動脈領域の梗塞による左半側の視空間無視,左半側身体失認は消失したが,左半側口腔内に特異的な症状が残存した症例について,口腔内に限局した左半側空間無視の可能性について検討した。    症例は64 歳女性右利き。左側口腔内において著明な要素的運動・知覚障害は認められないにもかかわらず,口腔内に挿入した模擬食塊の形状(球,三角錐,立方体)を識別させる物性認知検査を実施すると,口腔内左側においてのみ形状の認知ができないという異常を認めた。その際「左側では模擬食塊が消える」,「左側では模擬食塊が思い浮かばない」,「左側の口蓋の実がない」など特徴的な陳述が得られ,口腔内の描画検査でも異常を疑う所見...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 34; no. 2; pp. 252 - 259
Main Authors 本田, 慎一郎, 鈴木, 則夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能学会 30.06.2014
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ISSN1348-4818
1880-6554
DOI10.2496/hbfr.34.252

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Summary:右中大脳動脈領域の梗塞による左半側の視空間無視,左半側身体失認は消失したが,左半側口腔内に特異的な症状が残存した症例について,口腔内に限局した左半側空間無視の可能性について検討した。    症例は64 歳女性右利き。左側口腔内において著明な要素的運動・知覚障害は認められないにもかかわらず,口腔内に挿入した模擬食塊の形状(球,三角錐,立方体)を識別させる物性認知検査を実施すると,口腔内左側においてのみ形状の認知ができないという異常を認めた。その際「左側では模擬食塊が消える」,「左側では模擬食塊が思い浮かばない」,「左側の口蓋の実がない」など特徴的な陳述が得られ,口腔内の描画検査でも異常を疑う所見が得られた。   本例の左半側口腔内に限局した症状は,その原因を各口腔器官の運動・知覚障害,触覚性失認に帰結できない。本例の症状について,口腔内を複数の口腔器官に包み込まれた空間ととらえ,この空間表象が障害された口腔内左半側空間無視として解釈を試みた。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.34.252