膵頭十二指腸切除術を行った稀な動脈走行変異を伴う膵頭部癌の1例

症例は72歳,男性.肝機能障害を主訴に当院へ紹介受診となった.造影CTにて膵頭部に主膵管,総胆管の拡張を伴う15×10mm大の不整形,乏血性の腫瘤を認め,膵頭部癌と診断した.術前の画像評価において,上腸間膜動脈から総肝動脈と置換右肝動脈が別個に分岐し,さらに置換右肝動脈から第一空腸動脈と下膵十二指腸動脈の共通幹が分岐していることが確認された.非常に特異な動脈変異を伴う膵頭部癌と考えて,置換右肝動脈より分岐する下膵十二指腸動脈を処理し,肝動脈血流を損なうことなく亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後3カ月の造影CTにて温存した置換右肝動脈の血流は維持されていた.今回われわれは,Adachi...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 5; pp. 978 - 983
Main Authors 浅川, 愛里, 小林, 敦夫, 高田, 厚, 河原, 正樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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Summary:症例は72歳,男性.肝機能障害を主訴に当院へ紹介受診となった.造影CTにて膵頭部に主膵管,総胆管の拡張を伴う15×10mm大の不整形,乏血性の腫瘤を認め,膵頭部癌と診断した.術前の画像評価において,上腸間膜動脈から総肝動脈と置換右肝動脈が別個に分岐し,さらに置換右肝動脈から第一空腸動脈と下膵十二指腸動脈の共通幹が分岐していることが確認された.非常に特異な動脈変異を伴う膵頭部癌と考えて,置換右肝動脈より分岐する下膵十二指腸動脈を処理し,肝動脈血流を損なうことなく亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後3カ月の造影CTにて温存した置換右肝動脈の血流は維持されていた.今回われわれは,Adachi分類やMichels分類などの国際的な分類に記載のない,極めて稀な動脈の分岐走行変異を伴う膵頭部癌に対し,multi detector row CT(以下,MDCT)により術前に血管の分岐走行を把握し,臓器血流を損なうことなく安全に膵頭十二指腸切除術を施行しえた.若干の文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.978