早期から脾腎短絡路の発達を認めたAMA・M2抗体陰性の無症候性非硬変性原発性胆汁性胆管炎の一例

症例は67歳,女性.55歳の頃からシェーグレン症候群で近医に通院していた.57歳時に,スクリーニングのCTで脾臓付近の異常血管を指摘され精査目的にて当院を受診した.超音波上,慢性肝疾患の所見に乏しかったが遠肝性血流の脾腎短絡路を認めた.門脈や脾静脈は順流で腹水や脾腫を認めず,肝酵素値は正常範囲で抗ミトコンドリア抗体およびM2抗体も陰性であったことから原因不明の血行異常症として経過観察することとなった.その7年後から脾静脈血流に逆流成分が見られ,血清アンモニアも異常値を呈するようになった.顕性脳症を認めなかったが精査を要すると判断し肝静脈圧測定と肝生検を行った.肝静脈圧較差は4.8 mmHgと正...

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Published in肝臓 Vol. 58; no. 1; pp. 38 - 45
Main Authors 神田, 達郎, 高橋, 正憲, 清野, 宗一郎, 奥川, 英博, 近藤, 孝行, 嶋田, 太郎, 横須賀, 收, 丸山, 紀史, 小林, 和史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2017
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.58.38

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Summary:症例は67歳,女性.55歳の頃からシェーグレン症候群で近医に通院していた.57歳時に,スクリーニングのCTで脾臓付近の異常血管を指摘され精査目的にて当院を受診した.超音波上,慢性肝疾患の所見に乏しかったが遠肝性血流の脾腎短絡路を認めた.門脈や脾静脈は順流で腹水や脾腫を認めず,肝酵素値は正常範囲で抗ミトコンドリア抗体およびM2抗体も陰性であったことから原因不明の血行異常症として経過観察することとなった.その7年後から脾静脈血流に逆流成分が見られ,血清アンモニアも異常値を呈するようになった.顕性脳症を認めなかったが精査を要すると判断し肝静脈圧測定と肝生検を行った.肝静脈圧較差は4.8 mmHgと正常であったが,肝組織所見から原発性胆汁性胆管炎(PBC,Scheuer 2,中沼分類Stage 3)と診断された.本例は病初期から脾腎短絡路を合併し,無症候性から症候性PBCへの移行を認めた稀な一例である.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.58.38