術中に胸骨浸潤が診断された胸腺腫の1例

症例は58歳,男性.胸痛を主訴に前医を受診.縦隔腫瘍が疑われ当センターへ紹介となった.胸部CT検査にて前縦隔に胸骨と大動脈に広く接し,左腕頭静脈を狭小化させる径5cmの腫瘤を認めた.浸潤性胸腺腫あるいは胸腺癌と診断し手術を行った.胸骨正中切開にて手術を開始したところ,腫瘤は胸骨後面に浸潤していたため一部切開された.このため,浸潤が疑われる胸壁を周囲の浸潤臓器とともに合併切除した.術後病理検査にて断端陽性部位があり,放射線治療を追加した.その後の経過は良好で現在に至るまで無再発にて経過観察中である.胸腺腫の胸壁浸潤は稀であるが,術前診断が困難である.本例のごとく臨床症状や画像検査で胸壁浸潤が疑わ...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 73; no. 2; pp. 323 - 327
Main Authors 川井, 廉之, 齋藤, 雄一, 高橋, 伸政, 池谷, 朋彦, 村井, 克己, 星, 永進
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2012
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Summary:症例は58歳,男性.胸痛を主訴に前医を受診.縦隔腫瘍が疑われ当センターへ紹介となった.胸部CT検査にて前縦隔に胸骨と大動脈に広く接し,左腕頭静脈を狭小化させる径5cmの腫瘤を認めた.浸潤性胸腺腫あるいは胸腺癌と診断し手術を行った.胸骨正中切開にて手術を開始したところ,腫瘤は胸骨後面に浸潤していたため一部切開された.このため,浸潤が疑われる胸壁を周囲の浸潤臓器とともに合併切除した.術後病理検査にて断端陽性部位があり,放射線治療を追加した.その後の経過は良好で現在に至るまで無再発にて経過観察中である.胸腺腫の胸壁浸潤は稀であるが,術前診断が困難である.本例のごとく臨床症状や画像検査で胸壁浸潤が疑われた場合は,術中に注意深く検索し術式を検討するべきである.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.73.323