人工肛門造設後に再びイレウス症状を呈した同時性多発大腸癌の1例

症例は80歳,男性。腹痛を主訴に救急受診し,CTでS状結腸と直腸に進行癌を認め,S状結腸口側腸管の拡張を伴っていた。直腸癌が全周性狭窄病変で内視鏡が通過困難だったため,S状結腸癌の口側まで経肛門的イレウス管を留置することは不能と判断し,下行結腸で人工肛門を造設した。約1ヵ月後の根治術待機中に腹痛のため再度救急受診し,CTで2腫瘍間の腸管拡張像を認めた。直腸癌の狭窄部は辛うじてガイドワイヤーの通過が可能であり,経肛門的イレウス管を留置して減圧を行い,後日腹腔鏡下根治術を行った。術後経過は良好で術後16日目に退院した。大腸は他臓器に比べて多発癌が発生する頻度が高いとされるが,閉塞を呈する進行癌が多...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 39; no. 1; pp. 039 - 042
Main Authors 原, 拓央, 俵, 広樹, 林, 憲吾, 羽田, 匡宏, 加藤, 嘉一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2019
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.39.039

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Summary:症例は80歳,男性。腹痛を主訴に救急受診し,CTでS状結腸と直腸に進行癌を認め,S状結腸口側腸管の拡張を伴っていた。直腸癌が全周性狭窄病変で内視鏡が通過困難だったため,S状結腸癌の口側まで経肛門的イレウス管を留置することは不能と判断し,下行結腸で人工肛門を造設した。約1ヵ月後の根治術待機中に腹痛のため再度救急受診し,CTで2腫瘍間の腸管拡張像を認めた。直腸癌の狭窄部は辛うじてガイドワイヤーの通過が可能であり,経肛門的イレウス管を留置して減圧を行い,後日腹腔鏡下根治術を行った。術後経過は良好で術後16日目に退院した。大腸は他臓器に比べて多発癌が発生する頻度が高いとされるが,閉塞を呈する進行癌が多発することはまれである。通常大腸閉塞の場合は病変より口側に人工肛門を造設することで症状の緩和が可能だが,多発する進行病変の場合はその肛門側病変にも注意して治療計画を立てることが重要と考えられた。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.39.039