乳房外Paget病による皮膚潰瘍から小腸脱出をきたした鼠径ヘルニア破裂の1例

症例は86歳,男性.平成27年4月頃から下腹部に皮膚潰瘍が出現し,徐々に拡大.9月に体外へ腸管脱出をきたし来院した.下腹部から暗紫色に変色した壊死腸管が脱出しており,周囲の皮膚には約15cmの潰瘍形成を認めた.また,非還納性の右鼠径ヘルニアが併存していたため,緊急手術を施行.脱出腸管は下腹部の潰瘍の右鼠径部寄りにできた約2cmの孔で絞扼されており,絞扼を解除すると,その孔は右鼠径ヘルニア嚢に交通していた.ヘルニア門での絞扼は認めなかった.壊死腸管を切除し,右鼠径ヘルニアはiliopubic tract repair法で修復した.皮膚潰瘍,陰部のびらんは生検で乳房外Paget病と診断された.今回...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 78; no. 4; pp. 864 - 868
Main Authors 神谷, 真梨子, 米山, 克也, 北川, 太郎, 羽鳥, 慎祐, 益田, 宗孝, 鈴木, 喜裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2017
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.78.864

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Summary:症例は86歳,男性.平成27年4月頃から下腹部に皮膚潰瘍が出現し,徐々に拡大.9月に体外へ腸管脱出をきたし来院した.下腹部から暗紫色に変色した壊死腸管が脱出しており,周囲の皮膚には約15cmの潰瘍形成を認めた.また,非還納性の右鼠径ヘルニアが併存していたため,緊急手術を施行.脱出腸管は下腹部の潰瘍の右鼠径部寄りにできた約2cmの孔で絞扼されており,絞扼を解除すると,その孔は右鼠径ヘルニア嚢に交通していた.ヘルニア門での絞扼は認めなかった.壊死腸管を切除し,右鼠径ヘルニアはiliopubic tract repair法で修復した.皮膚潰瘍,陰部のびらんは生検で乳房外Paget病と診断された.今回,右鼠径ヘルニアと陰部乳房外Paget病が併存したことにより,下腹部の皮膚潰瘍からヘルニア嚢への交通が形成され,小腸の体外への脱出をきたした非常に稀な1例を経験した.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.78.864