開心術後心肺蘇生プロトコルCALSの導入と経験

開心術後心停止は,胸骨圧迫により重大な合併症を起こす可能性があるという点で,一般的な心停止と異なる.The Cardiac Surgery Advanced Life Support (CALS) は,開心術後心停止に対する心肺蘇生法として,2017年米国胸部外科学会 (STS) のエキスパートコンセンサスで推奨されており,当院では,2019年に同プロトコルを導入した.2019年4月から2022年5月までに開心術550例を行い,その中で術後心停止となりCALSプロトコルを発動した6例 (1.1%) を経験した.本報告では,虚血再灌流障害によるR on Tを繰り返す心室細動 (ventricul...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 52; no. 4; pp. 239 - 243
Main Authors 五十嵐, 亘, 高木, 大地, 五十嵐, 至, 和田, 卓也, 山本, 浩史, 角浜, 孝行, 山崎, 友也, 桐生, 健太郎, 板垣, 吉典, 荒井, 岳史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.07.2023
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.52.239

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Summary:開心術後心停止は,胸骨圧迫により重大な合併症を起こす可能性があるという点で,一般的な心停止と異なる.The Cardiac Surgery Advanced Life Support (CALS) は,開心術後心停止に対する心肺蘇生法として,2017年米国胸部外科学会 (STS) のエキスパートコンセンサスで推奨されており,当院では,2019年に同プロトコルを導入した.2019年4月から2022年5月までに開心術550例を行い,その中で術後心停止となりCALSプロトコルを発動した6例 (1.1%) を経験した.本報告では,虚血再灌流障害によるR on Tを繰り返す心室細動 (ventricular fibrillation: VF) を呈した症例を,その他5例のデータとともに報告する.症例は,67歳男性で,右冠動脈の灌流不全と心タンポナーデを伴うStanford A型急性大動脈解離に対し大動脈基部置換術,上行弓部大動脈置換術および冠動脈バイパス術を施行した.術当日,VFとなり,ICUスタッフにより速やかに電気的除細動が行われた.洞調律に復帰したが,数十秒から数分ごとにVFを繰り返した.再開胸による直接心臓マッサージと経皮的体外循環補助装置の装着を行うことで,VF発作は消失した.胸骨圧迫は回避され,神経学的合併症はなく,生存退院された.開心術後の心停止に対して,CALSプロトコルに従い,胸骨圧迫による合併症を回避し,蘇生を行うことができた.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.52.239