縦隔内甲状腺リンパ上皮性嚢胞の1例

症例は61歳,男性.左鎖骨上部の腫脹を主訴に近医を受診.頸部エコーにて甲状腺左葉に5cm大の嚢胞性腫瘍を認め,上縦隔まで及んでいた.縦隔内甲状腺腫に対する精査加療目的で,当院外科を紹介受診となった.造影CT検査では甲状腺左葉から峡部に多房性腫瘤があり,一部縦隔内への進展を認めた.縦隔内甲状腺腫に対して甲状腺左葉切除術を行った.切除標本は5.9×4.8cmの嚢胞性腫瘍を認めた.病理組織診断では大型嚢胞と近傍に複数の小型の嚢胞形成がみられた.嚢胞内面は扁平化した重層扁平上皮に覆われ,その直下に胚中心を有したリンパ濾胞が多数形成されており,甲状腺組織内に発生したリンパ上皮性嚢胞と診断された.悪性所見...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 79; no. 8; pp. 1597 - 1603
Main Authors 筑後, 孝章, 東, 千尋, 金泉, 博文, 菰池, 佳史, 新崎, 亘, 橋本, 幸彦, 田中, 裕美子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2018
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.79.1597

Cover

More Information
Summary:症例は61歳,男性.左鎖骨上部の腫脹を主訴に近医を受診.頸部エコーにて甲状腺左葉に5cm大の嚢胞性腫瘍を認め,上縦隔まで及んでいた.縦隔内甲状腺腫に対する精査加療目的で,当院外科を紹介受診となった.造影CT検査では甲状腺左葉から峡部に多房性腫瘤があり,一部縦隔内への進展を認めた.縦隔内甲状腺腫に対して甲状腺左葉切除術を行った.切除標本は5.9×4.8cmの嚢胞性腫瘍を認めた.病理組織診断では大型嚢胞と近傍に複数の小型の嚢胞形成がみられた.嚢胞内面は扁平化した重層扁平上皮に覆われ,その直下に胚中心を有したリンパ濾胞が多数形成されており,甲状腺組織内に発生したリンパ上皮性嚢胞と診断された.悪性所見はなかった.リンパ上皮性嚢胞が甲状腺内に発生するのは稀であり,われわれは上縦隔内にまで及ぶ症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.79.1597