胆嚢炎が原因と考えられた腹部ステントグラフト感染に対し,開腹人工血管置換を施行した1例

症例は67歳男性,約1年前に他院にて腹部大動脈瘤に対し腹部ステントグラフト内挿術を施行された.発熱を伴う急性腹症で受診し,造影CTでステントグラフト内血栓,瘤壁不連続性,左後腹膜腫瘤を認め,ステントグラフト感染が疑われた.抗生剤投与を開始し解熱したが再度発熱した.単純CTでは左後腹膜腫瘤の増大を認め,破裂(contained rupture)と診断し準緊急でステントグラフト抜去術を施行した.抜去したステントグラフトには黄白色組織の付着があり肉眼的にも感染所見を認めた.瘤壁は後壁の一部を残し可及的にデブリードメントした.再建はリファンピシンに浸漬した人工血管を用いてin-situ再建術を行った....

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 53; no. 3; pp. 143 - 146
Main Authors 渡邊, 裕之, 大津, 正義, 大谷, 啓江, 丸山, 拓人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.05.2024
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.53.143

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Summary:症例は67歳男性,約1年前に他院にて腹部大動脈瘤に対し腹部ステントグラフト内挿術を施行された.発熱を伴う急性腹症で受診し,造影CTでステントグラフト内血栓,瘤壁不連続性,左後腹膜腫瘤を認め,ステントグラフト感染が疑われた.抗生剤投与を開始し解熱したが再度発熱した.単純CTでは左後腹膜腫瘤の増大を認め,破裂(contained rupture)と診断し準緊急でステントグラフト抜去術を施行した.抜去したステントグラフトには黄白色組織の付着があり肉眼的にも感染所見を認めた.瘤壁は後壁の一部を残し可及的にデブリードメントした.再建はリファンピシンに浸漬した人工血管を用いてin-situ再建術を行った.大網充填のため肝湾曲部の剥離操作中に汚染腹水と胆嚢炎の所見があり,胆嚢摘出術を施行した.その後,再建人工血管全周を大網で被覆した.術中に採取した左後腹膜内膿汁,胆汁,および人工血管のすべてから同一の菌であるBacteroides thetaiotaomicronが検出され,急性胆嚢炎の経過中に血行性ステントグラフト感染を引き起こしたと診断した.術後経過は良好であり術後約3カ月の時点で感染再発は認めていない.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.53.143