腹腔鏡下肝部分切除中に発症したガス塞栓による急性循環不全の1例

79歳,男性.肝S6/7に存在する40mm大の肝細胞癌に対し,腹腔鏡下肝部分切除術を施行した.胃切除後の癒着剥離に時間を要し,手術開始3時間後に肝切離開始となった.術中,肝流入血遮断が施行できず,肝切離面の止血に難渋した.手術開始5時間後に血圧が50mmHg台へと急激に低下した.肝切離面の圧迫止血,急速輸液,昇圧剤を投与するも,循環動態は不安定であった.EtCO2は28mmHgに低下しており,血液ガス所見ではPaCO2は56.8mmHgとEtCO2との間に乖離を認めたことから,ガス塞栓による急性循環不全と診断した.直ちに気腹を中止し,開腹手術に移行したところ循環動態は改善した.肝切離時に損傷し...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 79; no. 5; pp. 1065 - 1069
Main Authors 菱沼, 正一, 尾澤, 巌, 尾形, 佳郎, 白川, 博文, 前原, 惇治, 富川, 盛啓
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2018
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.79.1065

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Summary:79歳,男性.肝S6/7に存在する40mm大の肝細胞癌に対し,腹腔鏡下肝部分切除術を施行した.胃切除後の癒着剥離に時間を要し,手術開始3時間後に肝切離開始となった.術中,肝流入血遮断が施行できず,肝切離面の止血に難渋した.手術開始5時間後に血圧が50mmHg台へと急激に低下した.肝切離面の圧迫止血,急速輸液,昇圧剤を投与するも,循環動態は不安定であった.EtCO2は28mmHgに低下しており,血液ガス所見ではPaCO2は56.8mmHgとEtCO2との間に乖離を認めたことから,ガス塞栓による急性循環不全と診断した.直ちに気腹を中止し,開腹手術に移行したところ循環動態は改善した.肝切離時に損傷した肝静脈枝から気腹ガスが血中へ流入したことでガス塞栓を起こしたと考えられた.ガス塞栓は鏡視下手術において重篤な合併症であり,慎重なモニタリングと迅速な対応が重要と考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.79.1065