胸部下行大動脈瘤破裂・大動脈食道瘻に対して胸部大動脈ステントグラフト内挿術のみで中期生存を得た1例

症例は82歳女性.嚥下困難を主訴に前医を受診し,上部消化管内視鏡検査を施行された.胸部中部食道の粘膜下腫瘍の生検が実施された.精査加療目的に当院消化器内科に緊急入院となった.入院後のCT検査で食道を圧排する胸部下行大脈瘤を認めた.入院第3病日に大量吐血してショックとなり,胸部下行大脈瘤破裂の食道穿破の診断で,蘇生処置を行いつつ緊急TEVARを施行した.脳脊髄合併症なく,気管切開して人工呼吸器を離脱し,術後7日目に集中治療室を退室した.術後1カ月のCT検査で嚢状瘤はほぼ消失し,食道の圧排も解除されていた.経口摂取以外の栄養管理を行い,ステントグラフト感染および縦隔炎の発生はなく,術後7カ月で自宅...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 53; no. 3; pp. 136 - 142
Main Authors 鈴木, 伸一, 益田, 宗孝, 町田, 大輔, 富永, 訓央, 湯川, 寛夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.05.2024
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.53.136

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Summary:症例は82歳女性.嚥下困難を主訴に前医を受診し,上部消化管内視鏡検査を施行された.胸部中部食道の粘膜下腫瘍の生検が実施された.精査加療目的に当院消化器内科に緊急入院となった.入院後のCT検査で食道を圧排する胸部下行大脈瘤を認めた.入院第3病日に大量吐血してショックとなり,胸部下行大脈瘤破裂の食道穿破の診断で,蘇生処置を行いつつ緊急TEVARを施行した.脳脊髄合併症なく,気管切開して人工呼吸器を離脱し,術後7日目に集中治療室を退室した.術後1カ月のCT検査で嚢状瘤はほぼ消失し,食道の圧排も解除されていた.経口摂取以外の栄養管理を行い,ステントグラフト感染および縦隔炎の発生はなく,術後7カ月で自宅退院した.胸部下行大動脈瘤破裂に対するTEVARの有用性は多く報告されている.しかし,大動脈食道瘻の症例では,感染制御目的にTEVAR施行後に食道切除術の必要があるとされ,本疾患の死亡率は高い.今回われわれは,TEVAR施行後に抗菌療法と経口摂取以外の栄養管理により,ステントグラフト感染および縦隔炎を制御し救命した症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.53.136