抗血栓薬継続下の内視鏡下鼻内手術についての検討

抗血栓薬投与を受けている手術患者では,投薬継続に伴う出血のリスクと投薬中止による血栓リスクのバランスをとることが重要である。しかし,耳鼻咽喉科領域の処置や手術における抗血栓薬中止の是非を検討した報告や休薬に関するエビデンスは少ない。そこで周術期における抗血栓薬投与の鼻内手術に対する影響を検討した。2014年から2019年9月の期間に当施設で行った内視鏡下鼻内手術症例770例を対象とした。内科主治医の評価と意見を参考に最終的に患者の意思を尊重し,抗血栓薬を継続する「継続群」と,休薬を行う「休薬群」の2群を設定した。抗血栓薬を内服していた例は30例で,継続群21例(男性21例,中央値67歳,51–...

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Published in日本鼻科学会会誌 Vol. 61; no. 1; pp. 124 - 130
Main Authors 御厨, 剛史, 田中, 成幸, 武富, 弘敬, 倉富, 勇一郎, 佐藤, 有記
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本鼻科学会 2022
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ISSN0910-9153
1883-7077
DOI10.7248/jjrhi.61.124

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Summary:抗血栓薬投与を受けている手術患者では,投薬継続に伴う出血のリスクと投薬中止による血栓リスクのバランスをとることが重要である。しかし,耳鼻咽喉科領域の処置や手術における抗血栓薬中止の是非を検討した報告や休薬に関するエビデンスは少ない。そこで周術期における抗血栓薬投与の鼻内手術に対する影響を検討した。2014年から2019年9月の期間に当施設で行った内視鏡下鼻内手術症例770例を対象とした。内科主治医の評価と意見を参考に最終的に患者の意思を尊重し,抗血栓薬を継続する「継続群」と,休薬を行う「休薬群」の2群を設定した。抗血栓薬を内服していた例は30例で,継続群21例(男性21例,中央値67歳,51–82歳),休薬群9例(男性8例,女性1例,中央値67歳,60–89歳)であった。2群間の術中出血量,手術時間,術後出血率については各項目に有意差は認めなかったが,休薬群で出血率が高く術後出血が遅くなる傾向がみられた。両群ともに血栓症や輸血が必要な症例は認めなかった。抗血栓薬内服歴がある30例中4例(13.3%)に後出血を認め,内服歴のない740例中9例(1.2%)に後出血を生じたのと比較し約11倍に出血率が上昇したが,通常のパッキング等の処置で対応可能であった。抗血栓薬継続下の手術は上記結果を説明し同意が得られれば,休薬に伴う血栓リスクを軽減できる有用な方法と考えた。
ISSN:0910-9153
1883-7077
DOI:10.7248/jjrhi.61.124