腹部杙創による外傷性下大静脈損傷の1例

杙創は先端が鈍である異物が,強力な外力により生体内に突き刺さった状態を指す.杙創に伴う大血管損傷の報告例は少ない.今回,腹部杙創による下大静脈を含む多臓器損傷をきたした1例を経験した.症例は16歳,男性.バレーボール練習中,剥がれた床木材が右季肋部より刺さり受傷した.CTにて下大静脈貫通,穿通性肝損傷,穿通性十二指腸損傷,膵損傷,椎間板損傷を疑い,受傷後3時間で緊急手術を施行した.下大静脈内に完全に侵入していた異物は下大静脈をクランプ後に除去,肝貫通部は抜去し止血,十二指腸穿通部は異物抜去と壁縫合閉鎖,そしてドレナージを行った.術後経過は良好であった.下大静脈の穿通性外傷は致死率が31-58%...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 79; no. 1; pp. 51 - 55
Main Authors 柴田, 佳久, 加藤, 岳人, 中山, 雅人, 三品, 拓也, 柴田, 淳平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2018
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.79.51

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Summary:杙創は先端が鈍である異物が,強力な外力により生体内に突き刺さった状態を指す.杙創に伴う大血管損傷の報告例は少ない.今回,腹部杙創による下大静脈を含む多臓器損傷をきたした1例を経験した.症例は16歳,男性.バレーボール練習中,剥がれた床木材が右季肋部より刺さり受傷した.CTにて下大静脈貫通,穿通性肝損傷,穿通性十二指腸損傷,膵損傷,椎間板損傷を疑い,受傷後3時間で緊急手術を施行した.下大静脈内に完全に侵入していた異物は下大静脈をクランプ後に除去,肝貫通部は抜去し止血,十二指腸穿通部は異物抜去と壁縫合閉鎖,そしてドレナージを行った.術後経過は良好であった.下大静脈の穿通性外傷は致死率が31-58%と予後不良とされる.本症例では,複数科の連携のもと迅速的確な手術を行い,良好な転帰を得ることができた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.79.51