重症僧帽弁閉鎖不全症に併存した弓部大動脈内血栓症に対して弓部大動脈人工血管置換術を施行した1例

症例は74歳男性.労作時の息切れを主訴に近医から心不全精査目的で当院に紹介となった.心エコーで重症僧帽弁閉鎖不全症を認め,さらにCTで弓部大動脈内血栓症と冠動脈狭窄症を認めたため,塞栓症のリスクを考慮して同日緊急手術を施行した.手術はfenestrated frozen elephant trunk法を併用した弓部大動脈人工血管置換術と僧帽弁形成術および冠動脈バイパス術を施行した.血液検査では凝固異常をきたしうる基礎疾患はなかった.術後合併症はなく経過は良好で術後19日目に独歩で自宅退院となった.術後1年を経過したが血栓症や心不全の再発は認めていない.本症例のように重症僧帽弁閉鎖不全症に大動脈...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 53; no. 3; pp. 131 - 135
Main Authors 山﨑, 琢磨, 建部, 祥, 栃木, 秀一, 齋藤, 真人, 丁, 毅文, 田辺, 友暁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.05.2024
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.53.131

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Summary:症例は74歳男性.労作時の息切れを主訴に近医から心不全精査目的で当院に紹介となった.心エコーで重症僧帽弁閉鎖不全症を認め,さらにCTで弓部大動脈内血栓症と冠動脈狭窄症を認めたため,塞栓症のリスクを考慮して同日緊急手術を施行した.手術はfenestrated frozen elephant trunk法を併用した弓部大動脈人工血管置換術と僧帽弁形成術および冠動脈バイパス術を施行した.血液検査では凝固異常をきたしうる基礎疾患はなかった.術後合併症はなく経過は良好で術後19日目に独歩で自宅退院となった.術後1年を経過したが血栓症や心不全の再発は認めていない.本症例のように重症僧帽弁閉鎖不全症に大動脈内血栓症を合併した例は稀である.血液凝固異常をきたしうる基礎疾患はなくとも大動脈内に血栓を形成する場合があることを念頭に診療を行うことが肝要であると考えられた.文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.53.131