健康成人における終夜睡眠中の中途覚醒 脳波的覚醒と行動的覚醒との対応

ヒトの終夜睡眠中の脳波的覚醒 (α波の出現) と行動的覚醒 (ボタン押し応答) との対応関係を調べた.大学生 (男子5名;女子5名) を対象に, 6夜連続の終夜睡眠ポリグラフ記録を実施した.被験者は, 睡眠中に覚醒したと気づいた時はいつでも, できる限り早く, 押しボタンを4回押すよう教示された (BSA).その結果は, 以下の通りである. (1) 全脳波的覚醒 (206件) 中, 121件 (59.8%) にボタン押し応答は観察されなかった, (2) この脳波的覚醒と行動的覚醒との不一致は, 実験第1夜で最も大きく, 睡眠周期が経過するに伴い小さくなる傾向が認められた, また, (3) ポリ...

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Published in生理心理学と精神生理学 Vol. 9; no. 1; pp. 1 - 13
Main Authors 松中, 久美子, 広重, 佳治, 保野, 孝弘, 宮田, 洋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生理心理学会 30.06.1991
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ISSN0289-2405
2185-551X
DOI10.5674/jjppp1983.9.1

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Summary:ヒトの終夜睡眠中の脳波的覚醒 (α波の出現) と行動的覚醒 (ボタン押し応答) との対応関係を調べた.大学生 (男子5名;女子5名) を対象に, 6夜連続の終夜睡眠ポリグラフ記録を実施した.被験者は, 睡眠中に覚醒したと気づいた時はいつでも, できる限り早く, 押しボタンを4回押すよう教示された (BSA).その結果は, 以下の通りである. (1) 全脳波的覚醒 (206件) 中, 121件 (59.8%) にボタン押し応答は観察されなかった, (2) この脳波的覚醒と行動的覚醒との不一致は, 実験第1夜で最も大きく, 睡眠周期が経過するに伴い小さくなる傾向が認められた, また, (3) ポリグラフ記録上に観察されたBSA度数と朝の自己評価数とに有意な高い相関が認められた.これらの結果は, α波の出現は, 「覚醒した」という主観的意識体験を必ずしも反映しないこと, 実験室順応や睡眠の時間的経過が, 睡眠中の中途覚醒の主観的意識体験に影響を及ぼすことを示す.また, 脳波を指標として中途覚醒を定義することに問題が残る.
ISSN:0289-2405
2185-551X
DOI:10.5674/jjppp1983.9.1