細菌の滑走運動メカニズムに関する研究

バクテリアの中には, ガラスや寒天, 宿主細胞などの固体表面上にくっつき, くっついたまま滑らかに移動するものがいる。このような運動は, 多種多様なバクテリアから観察されており, その振る舞いにも共通性がないように見えるが, ひとくくりに「滑走運動」と呼ばれてきた。しかし, この10年の間に, これらの運動メカニズムの理解は飛躍的に進展した。顕微鏡の可視化技術が発達することで, バクテリア個体や, そこに含まれる運動装置の動きや構造を詳細に観察できるようになった。これは, 生体運動という視点だけでなく, バクテリアの病原因子分泌機構や, 宿主との直接的な相互作用という視点からも非常に重要である...

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Published in日本細菌学雑誌 Vol. 70; no. 4; pp. 375 - 382
Main Author 中根, 大介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本細菌学会 2015
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ISSN0021-4930
1882-4110
DOI10.3412/jsb.70.375

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Summary:バクテリアの中には, ガラスや寒天, 宿主細胞などの固体表面上にくっつき, くっついたまま滑らかに移動するものがいる。このような運動は, 多種多様なバクテリアから観察されており, その振る舞いにも共通性がないように見えるが, ひとくくりに「滑走運動」と呼ばれてきた。しかし, この10年の間に, これらの運動メカニズムの理解は飛躍的に進展した。顕微鏡の可視化技術が発達することで, バクテリア個体や, そこに含まれる運動装置の動きや構造を詳細に観察できるようになった。これは, 生体運動という視点だけでなく, バクテリアの病原因子分泌機構や, 宿主との直接的な相互作用という視点からも非常に重要である。本総説では, 滑走運動能を持つバクテリアであるフラボバクテリアやマイコプラズマにおいて, 微小な生物がどのように運動しているのか, マイクロナノスケールでの現象に注目して, 最近の知見を紹介する。
ISSN:0021-4930
1882-4110
DOI:10.3412/jsb.70.375