両房室弁形成後の逆流急性増悪のために2弁置換を行った新生児Marfan症候群の1例

新生児Marfan症候群は新生児期・乳児期早期より重篤な心肺機能不全を呈するMarfan症候群の最重症型である.本症例は生後3カ月頃より心不全症状を認め,6カ月時に当科へ紹介された.家族歴にはMarfan症候群および心血管疾患はなかった.初診時,眼球陥凹,漏斗胸,クモ状指,拇指徴候の所見があった.心エコー検査で左室の拡大,高度僧帽弁閉鎖不全および中等度の三尖弁閉鎖不全を認めた.僧帽弁および三尖弁形成術を施行しMR trivial,TR mildまで改善したが,その後急激なMRの増悪を認め術後18日目に心停止を来たしたため,ECMOを導入したうえで緊急手術を行った.僧帽弁を観察したところ前回の手...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 52; no. 2; pp. 77 - 82
Main Authors 緒方, 裕樹, 豊川, 建二, 曽我, 欣治, 川井田, 啓介, 松葉, 智之, 山下, 雄史, 井本, 浩, 蔵元, 慎也, 上田, 英昭, 重久, 善哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.03.2023
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.52.77

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Summary:新生児Marfan症候群は新生児期・乳児期早期より重篤な心肺機能不全を呈するMarfan症候群の最重症型である.本症例は生後3カ月頃より心不全症状を認め,6カ月時に当科へ紹介された.家族歴にはMarfan症候群および心血管疾患はなかった.初診時,眼球陥凹,漏斗胸,クモ状指,拇指徴候の所見があった.心エコー検査で左室の拡大,高度僧帽弁閉鎖不全および中等度の三尖弁閉鎖不全を認めた.僧帽弁および三尖弁形成術を施行しMR trivial,TR mildまで改善したが,その後急激なMRの増悪を認め術後18日目に心停止を来たしたため,ECMOを導入したうえで緊急手術を行った.僧帽弁を観察したところ前回の手術操作部位に問題なく,弁輪拡大と弁組織の伸展拡大が逆流増悪の原因と思われた.僧帽弁置換術を行いECMO管理を続けた.しかしその後TRの急激な増悪を認め,僧帽弁置換術の9日後に三尖弁置換術を施行した.ECMO導入から37日目にこれを離脱,人工呼吸からは71日目に離脱した.その後の経過は現在までのところ良好である.新生児Marfan症候群の弁形成では成人Marfan症候群,あるいは通常の小児弁膜症とは異なる問題があり,術後の逆流増悪を来さないための検討が今後さらに必要である.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.52.77