白血球減少症を伴った術後急性膵炎の猫の1例
14歳齢、避妊雌の長毛雑種猫に対して、右前肢の滑膜肉腫の治療のために断脚術を実施した。症例は術後の2日間は良好な状態であったが、突然食欲が廃絶し、全身状態が悪化した。血液検査では、好中球減少(1,110/μl)を主体とした白血球減少症(1,790/μl)が見られ、その後、軽度の高窒素血症、血清総ビリルビン濃度の上昇、黄疸を示した。腹部超音波検査で膵臓の腫脹が明らかになり、さらに猫膵臓特異的リパーゼの定性検査で強陽性を示したことから、術後急性膵炎と診断した。急性膵炎に対する内科的治療を実施した結果、血液検査所見と全身状態は改善した。現在、初診から8ヵ月が経過しているが、全身状態は良好である。本症...
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Published in | 日本獣医麻酔外科学雑誌 Vol. 52; no. 2; pp. 31 - 35 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
2021
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 2189-6623 2189-6631 |
DOI | 10.2327/jjvas.52.31 |
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Summary: | 14歳齢、避妊雌の長毛雑種猫に対して、右前肢の滑膜肉腫の治療のために断脚術を実施した。症例は術後の2日間は良好な状態であったが、突然食欲が廃絶し、全身状態が悪化した。血液検査では、好中球減少(1,110/μl)を主体とした白血球減少症(1,790/μl)が見られ、その後、軽度の高窒素血症、血清総ビリルビン濃度の上昇、黄疸を示した。腹部超音波検査で膵臓の腫脹が明らかになり、さらに猫膵臓特異的リパーゼの定性検査で強陽性を示したことから、術後急性膵炎と診断した。急性膵炎に対する内科的治療を実施した結果、血液検査所見と全身状態は改善した。現在、初診から8ヵ月が経過しているが、全身状態は良好である。本症例から、腹腔内操作を行っていない手術後においても、急性膵炎が発生する可能性が示された。さらに白血球減少症は、猫の急性膵炎の初期症状として認められる可能性があることを認識する必要性があると考えられた。 |
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ISSN: | 2189-6623 2189-6631 |
DOI: | 10.2327/jjvas.52.31 |