非失語性呼称障害の 1 例─語新作と記号素性錯語に関する考察

特異な症状変化の経過を示した非失語性呼称障害の症例を報告した。症例は 54 歳の男性で, くも膜下出血にて発症した言語障害例である。重要な特徴は, 復唱が一貫して良好だったことである。発症 1.5ヵ月時, 発話は流暢で, 呼称では無関連錯語, 語新作, 記号素性錯語が頻発する語新作ジャルゴン様発話であった。その後, 言語症状は全般的に改善し, 発症 7.5 ヵ月時には, 語新作が消失し, 記号素性錯語と無関連錯語が残存した。この経過は, 当初, 超皮質性感覚失語と非失語性呼称障害が合併しており, その後双方の改善を認めたが, 失語の要素がより早期に改善し, 非失語性呼称障害が少なからず残存した...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 37; no. 3; pp. 321 - 329
Main Authors 元木, 雄一朗, 波多野, 和夫, 東川, 麻里, 武井, 徳子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 30.09.2017
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ISSN1348-4818
1880-6554
DOI10.2496/hbfr.37.321

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Summary:特異な症状変化の経過を示した非失語性呼称障害の症例を報告した。症例は 54 歳の男性で, くも膜下出血にて発症した言語障害例である。重要な特徴は, 復唱が一貫して良好だったことである。発症 1.5ヵ月時, 発話は流暢で, 呼称では無関連錯語, 語新作, 記号素性錯語が頻発する語新作ジャルゴン様発話であった。その後, 言語症状は全般的に改善し, 発症 7.5 ヵ月時には, 語新作が消失し, 記号素性錯語と無関連錯語が残存した。この経過は, 当初, 超皮質性感覚失語と非失語性呼称障害が合併しており, その後双方の改善を認めたが, 失語の要素がより早期に改善し, 非失語性呼称障害が少なからず残存した, と解釈された。語新作や記号素性錯語の分析を通じて, これらの語新作は単なる不規則な語音の連続ではなく, 複数の記号素の結合によるという「雑種語彙仮説」 (Buckingham 1981) による説明が可能と考えられた。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.37.321