急性虫垂炎を契機に診断された虫垂神経鞘腫の1例

症例は58歳の男性で,下腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部CTでは,虫垂の腫大と周囲脂肪織の濃度上昇が認められたため,急性虫垂炎の診断で緊急手術を施行した.開腹すると,膿苔が付着し炎症性に腫大した虫垂が認められたが,術中に明らかな腫瘍性病変は認識されず,虫垂切除術を施行した.摘出標本では,粘膜面にびらんや潰瘍を伴い壁が肥厚した虫垂を背景として,虫垂内腔に突出する径14mm大の隆起性病変が認められた.組織学的には,隆起性病変部では核の柵状配列を伴った紡錘形細胞の増殖が粘膜から固有筋層内に及んでおり,免疫組織染色ではS-100蛋白がびまん性に強陽性,desmin陰性,c-kit陰性,CD34陰性で...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 79; no. 4; pp. 803 - 807
Main Authors 木村, 聡大, 物井, 久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2018
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は58歳の男性で,下腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部CTでは,虫垂の腫大と周囲脂肪織の濃度上昇が認められたため,急性虫垂炎の診断で緊急手術を施行した.開腹すると,膿苔が付着し炎症性に腫大した虫垂が認められたが,術中に明らかな腫瘍性病変は認識されず,虫垂切除術を施行した.摘出標本では,粘膜面にびらんや潰瘍を伴い壁が肥厚した虫垂を背景として,虫垂内腔に突出する径14mm大の隆起性病変が認められた.組織学的には,隆起性病変部では核の柵状配列を伴った紡錘形細胞の増殖が粘膜から固有筋層内に及んでおり,免疫組織染色ではS-100蛋白がびまん性に強陽性,desmin陰性,c-kit陰性,CD34陰性であり,虫垂神経鞘腫と診断した.虫垂発生の神経鞘腫は非常に稀であり,本症例のように急性虫垂炎をきたして偶発的に診断される場合もあるため,若干の文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.79.803