一過性脊髄虚血症状で発見された腹部大動脈瘤の1例

症例は64歳男性.起床後に両下肢が動かないことに気づき救急要請.来院時両下肢の脱力,腹痛,腰痛を認めた.CT検査・腹部血管超音波検査にて最大径65×62 mmの腹部大動脈瘤を認めた.後壁側に血栓を認め,血栓内にCT画像ではhigh density area,腹部血管超音波検査では無エコー域を認め,壁在血栓の一部が液状化していると考えられた.来院後,脊髄虚血症状は徐々に改善傾向となったが,翌日下血を認め,緊急大腸内視鏡検査にて直腸の虚血性大腸炎と診断された.腹部大動脈瘤内の壁在血栓が腰動脈や内腸骨動脈に飛散し脊髄虚血や虚血性大腸炎を発症したと考えられた.脊髄虚血症状や直腸病変等を厳重に経過観察し...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 53; no. 1; pp. 38 - 42
Main Authors 三好, 麻衣子, 大谷, 享史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.01.2024
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.53.38

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Summary:症例は64歳男性.起床後に両下肢が動かないことに気づき救急要請.来院時両下肢の脱力,腹痛,腰痛を認めた.CT検査・腹部血管超音波検査にて最大径65×62 mmの腹部大動脈瘤を認めた.後壁側に血栓を認め,血栓内にCT画像ではhigh density area,腹部血管超音波検査では無エコー域を認め,壁在血栓の一部が液状化していると考えられた.来院後,脊髄虚血症状は徐々に改善傾向となったが,翌日下血を認め,緊急大腸内視鏡検査にて直腸の虚血性大腸炎と診断された.腹部大動脈瘤内の壁在血栓が腰動脈や内腸骨動脈に飛散し脊髄虚血や虚血性大腸炎を発症したと考えられた.脊髄虚血症状や直腸病変等を厳重に経過観察し改善傾向となったため,2週間後に開腹での人工血管置換術を施行した.術後も脊髄虚血症状や虚血性大腸炎は悪化することなく,速やかに改善し,術後13日目に退院した.一過性脊髄虚血症状から発見された腹部大動脈瘤症例はきわめて稀と考えられ報告する.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.53.38