左側頭葉前方部に病変を有する相貌失認の 2 症例
症例 1 は 20 歳代, 女性, 右利き。ヘルペス脳炎により両側側頭葉とくに左側頭葉前方部に広範な病変が認められた。重篤な相貌失認のほか, 動植物の認知障害, 健忘失語, 漢字の失読失書などを呈し, このうち相貌失認は 20 年以上にわたり症状を残した。症例 2 は 60 歳代, 男性, 右利き。50 歳代のとき側頭葉後端部に及ぶ右頭頂後頭葉の脳梗塞を発症し, 左同名性半盲, 左半側空間無視, 軽度左片麻痺を呈した。このとき相貌失認はなかった。9 年後, 左側頭葉の周囲に急性硬膜下血腫をきたした。当初は意識清明であったが, 1 週間後に反応が低下し, 皮質盲, 失語症が出現。CT では左側頭...
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Published in | 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 41; no. 3; pp. 317 - 324 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
30.09.2021
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Subjects | |
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ISSN | 1348-4818 1880-6554 |
DOI | 10.2496/hbfr.41.317 |
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Summary: | 症例 1 は 20 歳代, 女性, 右利き。ヘルペス脳炎により両側側頭葉とくに左側頭葉前方部に広範な病変が認められた。重篤な相貌失認のほか, 動植物の認知障害, 健忘失語, 漢字の失読失書などを呈し, このうち相貌失認は 20 年以上にわたり症状を残した。症例 2 は 60 歳代, 男性, 右利き。50 歳代のとき側頭葉後端部に及ぶ右頭頂後頭葉の脳梗塞を発症し, 左同名性半盲, 左半側空間無視, 軽度左片麻痺を呈した。このとき相貌失認はなかった。9 年後, 左側頭葉の周囲に急性硬膜下血腫をきたした。当初は意識清明であったが, 1 週間後に反応が低下し, 皮質盲, 失語症が出現。CT では左側頭葉前方部に低吸収域が認められた。その後, 重篤な相貌失認が 5 年あまり持続した。相貌失認は 2 症例ともに, 既知相貌の認識ができないだけでなく, 既知相貌の視覚的想起も困難なものであり, 顔の視覚性記憶の障害と考えられた。病変部位との関連と発現機序について考察した。 |
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ISSN: | 1348-4818 1880-6554 |
DOI: | 10.2496/hbfr.41.317 |