特別養護老人ホーム入居者の発熱に関する実態調査

特別養護老人ホーム(以下,特養)の入居者の多くは基礎疾患や複数の疾患を抱えていることから,特養には感染等による発熱を起こしやすい人が多く生活しているといえるだろう.今回特養入居者の発熱の実態を明らかにすることと発熱発症に関連する要因についての示唆を得ることを目的として,近畿圏内にある特養5施設の入居者295人を対象に調査を行った.年齢,性別,BMI,基礎疾患の有無,要介護度,食事時の介助の有無,排泄介助の有無,移動手段,尿道留置カテーテルの有無,発熱発症の有無について一次集計の後,変数間の関連について解析を行った.研究参加の同意が得られた134人のうち,1年間で医師の診察を必要とする発熱を発症...

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Published in日本環境感染学会誌 Vol. 37; no. 5; pp. 198 - 203
Main Authors 吉本, 和樹, 井内, 律子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本環境感染学会 25.09.2022
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Summary:特別養護老人ホーム(以下,特養)の入居者の多くは基礎疾患や複数の疾患を抱えていることから,特養には感染等による発熱を起こしやすい人が多く生活しているといえるだろう.今回特養入居者の発熱の実態を明らかにすることと発熱発症に関連する要因についての示唆を得ることを目的として,近畿圏内にある特養5施設の入居者295人を対象に調査を行った.年齢,性別,BMI,基礎疾患の有無,要介護度,食事時の介助の有無,排泄介助の有無,移動手段,尿道留置カテーテルの有無,発熱発症の有無について一次集計の後,変数間の関連について解析を行った.研究参加の同意が得られた134人のうち,1年間で医師の診察を必要とする発熱を発症したのは84人で,その84人は1年間で合計175回医師の診察を受けていた.発熱時の診断名で多かったのは風邪症候群,尿路感染症,肺炎,誤嚥性肺炎,気管支炎の順であった.多変量ロジスティック回帰分析により,基礎疾患がある人,そして食事介助が必要な人はそうでない人よりも発熱発症しやすいこととの関連がみられた.本研究により,特養の入居者のうち基礎疾患のある人,食事介助が必要な人に対する感染対策の徹底が,発熱発症のリスク軽減に寄与するのではないかという示唆が得られた.
ISSN:1882-532X
1883-2407
DOI:10.4058/jsei.37.198