地域多職種で連携し,がんに罹患した知的能力障害者の代理意思決定を行った1症例

近年は,がんに対する治療方法も多様化してきており,患者自身や家族により複雑な意思決定が求められる場面が増加している.その中で,意思決定能力がないと判断されたがん患者の治療方針を,どのような手順で,誰が決定するのかについて,本邦で定められた指針はない.殊に,知的能力障害を有するがん患者の終末期医療についての意思決定に関する報告は少ない.今回われわれは,がんに罹患した知的能力障害者の終末期医療についての意思決定に関わったので報告する.本症例では,意思決定能力の有無に関して,信頼性と妥当性が示された尺度等を用いて判断し,海外の報告や指針をもとに,福祉施設と病院が連携し多職種協同で代理意思決定を行い,...

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Published inPalliative Care Research Vol. 13; no. 1; pp. 1 - 5
Main Authors 相木, 佐代, 酒井, 小百合, 瑞樹, 知子, 荒川, 輝男, 栗生, 正義, 松井, 春希, 穴山, 良
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本緩和医療学会 2018
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Summary:近年は,がんに対する治療方法も多様化してきており,患者自身や家族により複雑な意思決定が求められる場面が増加している.その中で,意思決定能力がないと判断されたがん患者の治療方針を,どのような手順で,誰が決定するのかについて,本邦で定められた指針はない.殊に,知的能力障害を有するがん患者の終末期医療についての意思決定に関する報告は少ない.今回われわれは,がんに罹患した知的能力障害者の終末期医療についての意思決定に関わったので報告する.本症例では,意思決定能力の有無に関して,信頼性と妥当性が示された尺度等を用いて判断し,海外の報告や指針をもとに,福祉施設と病院が連携し多職種協同で代理意思決定を行い,心肺停止時の蘇生措置は行わず,緩和ケア病棟で療養するとの選択に至った.今後,本邦においても知的能力障害を有しているがん患者の終末期における意思決定支援,および代理意思決定についての指針が示されることが望まれる.
ISSN:1880-5302
DOI:10.2512/jspm.13.1