当科におけるリポソーマルアムホテリシンB の使用評価

2006 年12 月から2008 年4 月までの間に札幌医科大学附属病院第四内科に入院した患者の内,リポソーマルアムホテリシンB(L-AMB)が投与された患者計32 症例を対象にL-AMB の有効性と安全性を評価するために後方視的検討を行った.基礎疾患は血液疾患が87.5%と多数を占め,その内訳は急性骨髄性白血病が最も多く,全体の50%を占めており,次いで悪性リンパ腫が全体の12.5%であった.L-AMB の平均投与期間は14.2±12.9 日,累積投与量は平均1,786±2,181mg であった.予防投与の3 例を除き,何らかの真菌感染症を発症もしくは発熱性好中球減少症を発症した29 例中,...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 84; no. 2; pp. 182 - 186
Main Authors 村瀬, 和幸, 佐藤, 勉, 佐藤, 康史, 小船, 雅義, 加藤, 淳二, 瀧本, 理修, 菊地, 尚平, 井山, 諭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.03.2010
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi.84.182

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Summary:2006 年12 月から2008 年4 月までの間に札幌医科大学附属病院第四内科に入院した患者の内,リポソーマルアムホテリシンB(L-AMB)が投与された患者計32 症例を対象にL-AMB の有効性と安全性を評価するために後方視的検討を行った.基礎疾患は血液疾患が87.5%と多数を占め,その内訳は急性骨髄性白血病が最も多く,全体の50%を占めており,次いで悪性リンパ腫が全体の12.5%であった.L-AMB の平均投与期間は14.2±12.9 日,累積投与量は平均1,786±2,181mg であった.予防投与の3 例を除き,何らかの真菌感染症を発症もしくは発熱性好中球減少症を発症した29 例中,21 例(72.4%)で改善効果を認めた.有害事象の重症度は,軽度9 例,中等度7 例であり,重度の副作用を認めた症例はなかった.低カリウム血症が7 例(21.9%)に,クレアチニン上昇が4 例(12.5%)に認められたがいずれも軽度であった.投与を中止した中等度副作用発生例に関しては,いずれも投与中止後に症状の正常化を確認出来た.以上のことから,これまでの海外の報告と同様に,我々の検討においてもL-AMB が高い有効性と安全性を有することが示唆された.特に確定診断がつく前の早期にL-AMB を使用開始することが良好な治療成績に結びつく可能性が考えられた.また生理食塩水の負荷など十分な補液量を行うことや,血清カリウムなどの電解質バランスを管理することでL-AMB を安全に使用できることが示唆された.従来型のアムホテリシンB では,腎毒性などの理由により使用が限られていたが,副作用が大幅に軽減されたL-AMB は真菌感染のリスクを持った血液疾患患者や既に真菌感染症を発症した血液疾患患者の治療薬として有用であると考えられた.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi.84.182