新たなMRSA アウトブレイク予兆検知法

従来より実施されてきた耐性菌サーベイランスによるアウトブレイク予兆の検知方法(従来法)は月初めから月末までの新規耐性菌検出数を1 単位として集計・解析するため,2 カ月にわたって発生したアウトブレイク予兆の検知が遅れるあるいは検知することができない可能性がある.今回我々は従来法による検知方法の問題点を明らかにし,さらにその問題点を回避するための新たな解析方法(Real time analyzing method : RTA 法)を考案し,MRSA サーベイランスへの適応を試みた. 大阪大学医学部附属病院において3 年間で新規にMRSA が検出された患者のうち,入院後48 時間以降に検出された5...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 84; no. 6; pp. 734 - 739
Main Authors 田仲, 鐵次, 出口, 松夫, 鍵田, 正智, 吉岡, 範, 浅利, 誠志, 朝野, 和典, 鍋谷, 佳子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.11.2010
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Summary:従来より実施されてきた耐性菌サーベイランスによるアウトブレイク予兆の検知方法(従来法)は月初めから月末までの新規耐性菌検出数を1 単位として集計・解析するため,2 カ月にわたって発生したアウトブレイク予兆の検知が遅れるあるいは検知することができない可能性がある.今回我々は従来法による検知方法の問題点を明らかにし,さらにその問題点を回避するための新たな解析方法(Real time analyzing method : RTA 法)を考案し,MRSA サーベイランスへの適応を試みた. 大阪大学医学部附属病院において3 年間で新規にMRSA が検出された患者のうち,入院後48 時間以降に検出された572 人を対象とした.従来法によるアウトブレイク予兆検知日の分布を調べた結果,アウトブレイク予兆検知日の約半数は月の後半(21 日以降)に集中した.すなわち,この検知日の月末への片寄りは従来法の集計法に帰するものと考えられた. 次に,従来法とRTA 法における検知件数および検知日を比較した結果,RTA 法により新たに検知可能となったアウトブレイク予兆検知件数(従来法見逃し件数)は3 年間で38 件であった.また,RTA 法の早期検知平均日数はMRSA の検出日ごとに集計する検出日集計法(従来法A)より4.3 日早く,月末にまとめて集計する月末集計法(従来法B)より15.7 日早かった.さらに,RTA 法の早期検知による推定感染阻止効果数を調べた結果,従来法A からRTA 法への変更により,1 年間に14~18 人への感染を阻止できる可能性が,従来法B からRTA 法への変更により,1 年間に18~25 人への感染を阻止できる可能性が示唆された.以上のことからRTA 法を用いることで,迅速かつ的確な感染対策が可能となり,アウトブレイクの阻止およびMRSA 感染症の低減に十分貢献できると考える.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi.84.734