腎移植患者の口腔内感染対策の現状

腎移植患者は免疫抑制下にあり,健常人では問題とならない感染症が腎移植患者には致命的な問題となりうる.それゆえ活動性感染症や悪性腫瘍など,手術や免疫抑制法により増悪する疾患がある場合,腎移植は禁忌となる.活動性感染症はまず治療し沈静化させ,非活動性感染症でも免疫抑制剤により再燃することがあるので,厳重な術前検査を行い感染症の評価を行った上で腎移植を行っている.歯科口腔内診察は腎移植希望者の術前検査として細菌感染症である齲歯や歯周病を評価する上で必須のものであるが,とくに緊急手術となる献腎移植の患者では未診察・未治療のことが多い.未治療の齲歯や歯周病が腎移植後の免疫抑制下で脳膿瘍を惹起し予後不良と...

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Published in日本環境感染学会誌 Vol. 37; no. 3; pp. 95 - 99
Main Authors 小﨑, 浩一, 岩島, 知子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本環境感染学会 25.05.2022
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Summary:腎移植患者は免疫抑制下にあり,健常人では問題とならない感染症が腎移植患者には致命的な問題となりうる.それゆえ活動性感染症や悪性腫瘍など,手術や免疫抑制法により増悪する疾患がある場合,腎移植は禁忌となる.活動性感染症はまず治療し沈静化させ,非活動性感染症でも免疫抑制剤により再燃することがあるので,厳重な術前検査を行い感染症の評価を行った上で腎移植を行っている.歯科口腔内診察は腎移植希望者の術前検査として細菌感染症である齲歯や歯周病を評価する上で必須のものであるが,とくに緊急手術となる献腎移植の患者では未診察・未治療のことが多い.未治療の齲歯や歯周病が腎移植後の免疫抑制下で脳膿瘍を惹起し予後不良となることがあり,十分な注意が必要である.予定手術の生体腎移植では術前口腔内病変の有無を精査,治療を行った上で移植を行うが,緊急手術である献腎移植では,年1回の献腎移植登録更新時に口腔内診察の状況を確認し,移植直前に再度確認,問題なければ移植を行う.治療が不十分ならば移植直前でも活動性感染巣に対し治療を行い,移植を行っている.それでも対処不能の活動性感染巣があった場合には,腎移植を回避・延期することになる.移植後も免疫抑制剤や降圧剤により歯肉肥厚や口内炎,あるいは非活動性感染巣であった齲歯や歯周病が再燃することがあり,腎移植前後に口腔内病変の有無を確認し,感染症予防を行うことは極めて重要である.
ISSN:1882-532X
1883-2407
DOI:10.4058/jsei.37.95