新生児集中治療室の療養環境におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌伝播防止対策:システマティック・スコーピングレビュー
新生児集中治療室(neonatal intensive care unit:NICU)の感染防止対策については,標準予防策や手指衛生の遵守向上によりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)発生を低減した報告が散見される.しかし,院内伝播は抑制しきれていない現状がある.NICUの療養環境におけるMRSA感染防止対策上,今後探究すべき問題の所在を明らかにする目的でシステマティック・スコーピングレビューを実施した.医学中央雑誌とpubmedのデータベースを用い,1950年1月1日から2019年10月31日までの公...
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Published in | 日本環境感染学会誌 Vol. 37; no. 1; pp. 18 - 24 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本環境感染学会
25.01.2022
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Summary: | 新生児集中治療室(neonatal intensive care unit:NICU)の感染防止対策については,標準予防策や手指衛生の遵守向上によりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)発生を低減した報告が散見される.しかし,院内伝播は抑制しきれていない現状がある.NICUの療養環境におけるMRSA感染防止対策上,今後探究すべき問題の所在を明らかにする目的でシステマティック・スコーピングレビューを実施した.医学中央雑誌とpubmedのデータベースを用い,1950年1月1日から2019年10月31日までの公表論文を検索した.NICUの療養環境への対策ならびにMRSA発生状況が記載されたものを包含基準とし,文献22編を選定した.療養環境の対策は,主にアウトブレイク対応や伝播低減の目的で実施され,内容を3つのカテゴリー:「環境の衛生管理」,「患児・医療従事者の配置」,「病床設備」に分類した.清掃手順の変更や施設改修などの対策によりMRSA発生の低下が示され,患児の配置や隔離の有無,担当看護師の作業動線によるMRSA伝播リスクの上昇が報告されていた.手指や物品の衛生のタイミングは,患児の療養環境の区域の明確化により図られるが,その区域に着目した療養環境の対策の効果は検証されていない.患児の区域の明確化などを含めた療養環境の整備対策によるMRSA伝播防止効果について,今後検証すべき課題であることが明らかとなった. |
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ISSN: | 1882-532X 1883-2407 |
DOI: | 10.4058/jsei.37.18 |