ハンドボール選手に生じた膝前方部痛の解釈 膝蓋下脂肪体に着目して

膝蓋下脂肪体は関節運動に伴い機能的に変形し,膝関節内の内圧調整に関与する。その一方で,炎症や変性をきっかけに膝前方部痛の要因になる組織である。今回,若年女性ハンドボール選手で膝前方部痛を呈した症例を経験した。単純レントゲン画像及びMRI画像からは明らかな異常を認めなかったが,超音波検査による動態観察では,健側と比較して膝関節最終伸展域で,膝蓋下脂肪体が膝蓋靱帯と脛骨顆の間に進入する動態が乏しかった。膝関節可動域(患側/健側)は屈曲140°/150°,伸展-10°/5°と制限があり,各最終域で膝蓋骨下部に疼痛を訴えた。また健側と比較して膝蓋骨低位と膝蓋下脂肪体の柔軟性低下を認めた。所見から疼痛の...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 67; no. 4; pp. 528 - 532
Main Authors 熊澤, 愼志, 高木, 理光, 仲井, 宏史, 橋本, 英久, 久保田, 大夢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2018
日本農村医学会
Subjects
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ISSN0468-2513
1349-7421
DOI10.2185/jjrm.67.528

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Summary:膝蓋下脂肪体は関節運動に伴い機能的に変形し,膝関節内の内圧調整に関与する。その一方で,炎症や変性をきっかけに膝前方部痛の要因になる組織である。今回,若年女性ハンドボール選手で膝前方部痛を呈した症例を経験した。単純レントゲン画像及びMRI画像からは明らかな異常を認めなかったが,超音波検査による動態観察では,健側と比較して膝関節最終伸展域で,膝蓋下脂肪体が膝蓋靱帯と脛骨顆の間に進入する動態が乏しかった。膝関節可動域(患側/健側)は屈曲140°/150°,伸展-10°/5°と制限があり,各最終域で膝蓋骨下部に疼痛を訴えた。また健側と比較して膝蓋骨低位と膝蓋下脂肪体の柔軟性低下を認めた。所見から疼痛の原因は膝蓋下脂肪体の機能障害による膝関節伸展制限であると推察した。膝蓋下脂肪体への治療や関節可動域訓練及び筋力増強訓練を実施したことで,疼痛と関節可動域制限は改善し競技への復帰を果たした。
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.67.528