放射線併用超選択的動注化学療法後の救済手術

機能温存の観点から,顎口腔癌に対する放射線併用超選択的動注化学療法(CCRT-HFT)は標準治療として期待されている。しかし,臨床効果CR後の再発に対する救済療法については,明確な基準がなく,予後,合併症の問題から慎重な対応が要求される。当科では根治的CCRT-HFTを51例に施行し,臨床効果CR(45例:88.2%)が得られた。その後,経過観察中に原発巣の再発を16例(35.6%)に認め,51例中で29例(56.9%)が原発巣での腫瘍の残存,再発を認めなかった。16例全例に救済手術(臓器を越えない局所切除:6例,広範囲な拡大切除:10例)を施行し,68.8%の症例が原発巣の制御が可能であった...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 22; no. 3; pp. 94 - 101
Main Authors 中嶋, 頼俊, 北村, 哲也, 藤田, 昌宏, 浅香, 雄一郎, 村上, 真澄, 林, 信, 山下, 徹郎, 箭原, 元基, 上田, 倫弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2010
日本口腔腫瘍学会
Subjects
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ISSN0915-5988
1884-4995
DOI10.5843/jsot.22.94

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Summary:機能温存の観点から,顎口腔癌に対する放射線併用超選択的動注化学療法(CCRT-HFT)は標準治療として期待されている。しかし,臨床効果CR後の再発に対する救済療法については,明確な基準がなく,予後,合併症の問題から慎重な対応が要求される。当科では根治的CCRT-HFTを51例に施行し,臨床効果CR(45例:88.2%)が得られた。その後,経過観察中に原発巣の再発を16例(35.6%)に認め,51例中で29例(56.9%)が原発巣での腫瘍の残存,再発を認めなかった。16例全例に救済手術(臓器を越えない局所切除:6例,広範囲な拡大切除:10例)を施行し,68.8%の症例が原発巣の制御が可能であった。しかし,救済手術例のKaplan-Meier法による2年,3年,5年無病生存率は,それぞれ57.7%,50.5%,37.9%であった。 計画手術も含め,CCRT-HFT後に拡大手術と遊離皮弁による再建術を施行した42例を対象に手術に与える影響を検討した。本法導入前の切除および遊離皮弁による再建術を同時に行った症例105例との比較では,手術時間,出血量,局所合併症,皮弁生着率に不利に作用してはいなかった。予後を規定する因子として,病理組織学的にリンパ節転移陽性例,特に転移個数が3個以上の症例,転移レベルIII以下の症例で予後は有意に不良であった。 以上より,CCRT-HFT後であっても救済手術を行うことは十分に可能である。局所制御が可能な症例もあるが,遠隔転移により救済不能となる症例も多く,今後は,救済手術の適応を考慮することはもとより,根治的療法としてのCCRT-HFTの適応を慎重に検討することが重要と考えられた。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.22.94