内皮-平滑筋細胞共培養モデルのMMP産生に対する高壁せん断応力環境の影響

大動脈弁狭窄症では上行大動脈壁に生理的状態に比べ非常に高い10Pa以上の壁せん断応力が作用することが報告されている.このような高い壁せん断応力環境と,大動脈弁狭窄症と併発する大動脈拡張や解離との関係が示唆されているもののその詳細は明らかになっていない.血管壁恒常性に重要な役割を担う血管内皮細胞と中膜に存在する平滑筋細胞の機能異常を高壁せん断応力刺激が引き起こし,動脈壁を脆弱化している可能性が考えられる.本研究では培養環境下で内皮細胞と平滑筋細胞の相互作用を再現した共培養モデルを用い,血管壁構成成分分解酵素であるMatrix Metalloproteinases(MMPs)産生に対する高壁せん断...

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Published in生体医工学 Vol. Annual58; no. Abstract; p. 359
Main Authors 坂元, 尚哉, 大山, 侑樹, 中村, 匡徳, 木村, 直行, 川人, 宏次, 山崎, 雅史, 藤江, 裕道
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2020
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Summary:大動脈弁狭窄症では上行大動脈壁に生理的状態に比べ非常に高い10Pa以上の壁せん断応力が作用することが報告されている.このような高い壁せん断応力環境と,大動脈弁狭窄症と併発する大動脈拡張や解離との関係が示唆されているもののその詳細は明らかになっていない.血管壁恒常性に重要な役割を担う血管内皮細胞と中膜に存在する平滑筋細胞の機能異常を高壁せん断応力刺激が引き起こし,動脈壁を脆弱化している可能性が考えられる.本研究では培養環境下で内皮細胞と平滑筋細胞の相互作用を再現した共培養モデルを用い,血管壁構成成分分解酵素であるMatrix Metalloproteinases(MMPs)産生に対する高壁せん断応力刺激の影響を調べた.ヒト大動脈由来平滑筋細胞を含むコラーゲンゲルを遠心分離により圧縮し,その上部に内皮細胞を播種し共培養モデルを構築した.共培養モデルに2Paもしくは20Paの壁せん断応力を負荷した後,内皮細胞および平滑筋細胞を分離し,それぞれの細胞内のMMP-2,-9の産生量をウェスタンブロッティング法により調べた.その結果,内皮細胞のMMP-2産生および平滑筋細胞のMMP-9産生において壁せん断応力の大きさに依存した増加傾向を示した.本研究の結果から大動脈拡大・解離病変において認められるMMP-2およびMMP-9産生増加に対して,高壁せん断応力環境の影響があることが示唆される.
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual58.359