シーケンシャルメモリ課題の呈示間隔と記憶方略

背景と目的】記憶対象を順番に呈示するシーケンシャルメモリ課題において、記憶対象の呈示間隔を短縮すると記憶成績が低下する。この時のθ波帯域(5–7 Hz)脳律動を調べた先行研究で、呈示間隔の短縮によって記銘時の注意が低下することが示唆された。本研究ではβ波帯域(14–29 Hz)の脳律動に着目し、呈示間隔の長短によってワーキングメモリ機能に差が生じるかを検討した。【方法】若年被験者29名(22.9±1.9歳)が実験に参加した。シーケンシャルな記憶課題は、上下左右いずれかの矢印が順番に7つ呈示され、その後に呈示される数字に該当する順番の矢印方向をボタン押しで回答するものであった。記憶課題として記憶...

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Published in生体医工学 Vol. Annual58; no. Abstract; p. 445
Main Authors 高瀬, 友貴, 穴田, 理紗, 横澤, 宏一, 高瀬, 崚研
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2020
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual58.445

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Summary:背景と目的】記憶対象を順番に呈示するシーケンシャルメモリ課題において、記憶対象の呈示間隔を短縮すると記憶成績が低下する。この時のθ波帯域(5–7 Hz)脳律動を調べた先行研究で、呈示間隔の短縮によって記銘時の注意が低下することが示唆された。本研究ではβ波帯域(14–29 Hz)の脳律動に着目し、呈示間隔の長短によってワーキングメモリ機能に差が生じるかを検討した。【方法】若年被験者29名(22.9±1.9歳)が実験に参加した。シーケンシャルな記憶課題は、上下左右いずれかの矢印が順番に7つ呈示され、その後に呈示される数字に該当する順番の矢印方向をボタン押しで回答するものであった。記憶課題として記憶対象の呈示間隔が異なる2つの条件を用意した(0.6 s: Slow条件、0.25 s: Fast条件)。β波帯域の脳律動振幅を記銘時間と保持時間で各々求め、68の脳領域で条件間(Slow条件・Fast条件)比較し、Bonferroni(p<0.01)で多重比較補正した。【結果と考察】下側頭回と外側後頭部と呼ばれる視覚や記憶に関連する脳領域において、保持時間中のβ波振幅は、Fast条件がSlow条件よりも有意に大きかった。ワーキングメモリには音韻性ループと視空間スケッチパットという一時的な情報把握機構がある。Fast条件では音韻的に記憶する時間的余裕がなく、視空間スケッチパットが優位となることが示唆された。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual58.445