T波研究の歴史と正常T波の成因

心室の再分極波であるT波は,心室各部の興奮消退過程の時空間的な差異が体表面誘導に反映された波形である.正常なT波がQRS波と同じ極性をもつことは,心室の興奮消退過程が興奮伝播過程と異なるシークエンスであることを意味する.心内膜側と心外膜側を考えると,興奮はPurkinje線維網が走る心内膜側から始まり,心外膜側へと伝搬する.一方,興奮の消退過程は逆に心外膜側から始まり,心内膜側へ波及する.これは,心筋全層の収縮弛緩時におけるエネルギー効率を最大化する上でも重要である.そのために心筋細胞のイオンチャネル,ポンプ,トランスポーターやCa2+ハンドリング蛋白,収縮蛋白のCa2+感受性は,合目的的に心...

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Published in心電図 Vol. 44; no. 2; pp. 126 - 132
Main Author 丸山, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本不整脈心電学会 31.07.2024
日本不整脈心電学会
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Summary:心室の再分極波であるT波は,心室各部の興奮消退過程の時空間的な差異が体表面誘導に反映された波形である.正常なT波がQRS波と同じ極性をもつことは,心室の興奮消退過程が興奮伝播過程と異なるシークエンスであることを意味する.心内膜側と心外膜側を考えると,興奮はPurkinje線維網が走る心内膜側から始まり,心外膜側へと伝搬する.一方,興奮の消退過程は逆に心外膜側から始まり,心内膜側へ波及する.これは,心筋全層の収縮弛緩時におけるエネルギー効率を最大化する上でも重要である.そのために心筋細胞のイオンチャネル,ポンプ,トランスポーターやCa2+ハンドリング蛋白,収縮蛋白のCa2+感受性は,合目的的に心筋全層にわたり貫壁性の勾配を示す.これらが活動電位波形の局所的な差異を生み出しており,正常なT波の形成にも関与している.
ISSN:0285-1660
1884-2437
DOI:10.5105/jse.44.126