Gentamicinの体液中移行に関する実験的研究

Gentamicin (GM) の筋注後における体液中移行濃度 (膵液中移行, 腹腔内移行, 胆汁中移行) を測定する目的から, 雑種成犬を用いて実験をおこない, 以下の結果を得た。 (1) GM4mg/kg 1回筋注後1~1.5時間で膵液中最高移行濃度を示し, その値は血中最高移行濃度の51.3%であつた。 (2) GM1回筋注後30分~1時間に胆汁中最高移行濃度を示し, その値は血中最高移行濃度の約50%であつた。 (3) GM1回筋注後腹腔内に良好の移行をみとめた。 (4) 尿中には周知のとおり高率の排泄をみとめた。 外科領域における感染症のしめる重要性は, 現在にいたるまでの種々の抗生...

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Published inThe Japanese Journal of Antibiotics Vol. 29; no. 12; pp. 1035 - 1041
Main Authors 李, 雨元, 三浦, 純一, 四谷, 敏朗, 高山, 宏夫, 石井, 淳一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本感染症医薬品協会 01.12.1976
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Summary:Gentamicin (GM) の筋注後における体液中移行濃度 (膵液中移行, 腹腔内移行, 胆汁中移行) を測定する目的から, 雑種成犬を用いて実験をおこない, 以下の結果を得た。 (1) GM4mg/kg 1回筋注後1~1.5時間で膵液中最高移行濃度を示し, その値は血中最高移行濃度の51.3%であつた。 (2) GM1回筋注後30分~1時間に胆汁中最高移行濃度を示し, その値は血中最高移行濃度の約50%であつた。 (3) GM1回筋注後腹腔内に良好の移行をみとめた。 (4) 尿中には周知のとおり高率の排泄をみとめた。 外科領域における感染症のしめる重要性は, 現在にいたるまでの種々の抗生物質の開発による画期的な治療法の確立にもかかわらず, 臨床上の重要性はいささかも減じていない。グラム陽性菌が原因菌の感染症, 特に耐性Staphylococcus aureusは, 耐性ブドウ球菌用PCの出現によつて, これによる重症難治の感染症の治療臨床上解決される症例が比較的多くなつてきた。一方, 最近の外科感染症の原因菌は, グラム陽性菌からグラム陰性菌 (GNB) に変りつつあるのが一般的傾向である。このうち特に緑膿菌感染症は, 数年来多発の傾向になり, 表在性感染症だけでなく, 深部感染症, 特に敗血症のような重篤な症例の起炎菌となつてきており, 臨床的意義は大きい。 従来, 緑膿菌感染症に対しては, 投与効果を期待しうる抗生物質としてPolymyxin B (PL-B), Colistin (CL) 等であつたが, Carbenicillin(CB-PC)の大量投与とともに, 難治性である緑膿菌感染症を比較的低濃度で阻止しうるのはGentamicin (GM) をはじめ同系列に入るDKB(Dibekacin, Dideoxykanamycin B), Tobramycin, BB-K8 (Amikacin) 等のアミノ配糖体の抗生物質であろう。 膵臓外科疾患においては, 比較的重症例が多く, また膵痩形成等の問題によつて長期化学療法剤の投与が必要と思われる。したがつて緑膿菌感染症についても, 考慮をおこたつてはならない。著者らは, 体液移行面から各種抗生物質の膵液中移行の観察を雑種成犬を用いて測定してきたが, 今回Gentamicinの現在まで比較的報告の少い膵液中移行, 腹腔貯留液移行とあわせ, 胆汁中, 尿中排泄濃度を測定し, 知見を得たので報告するとともに, 当教室で外科入院患者にGentamicinを使用した症例の臨床結果について報告する。
ISSN:0368-2781
2186-5477
DOI:10.11553/antibiotics1968b.29.1035