右側心膜欠損症との関連が示唆された重症三尖弁閉鎖不全症の1例

心膜欠損症は稀な先天性疾患で,その診断は必ずしも容易ではない.無症状で経過し,他疾患に対する胸部手術の際に偶然発見される症例も多い.今回われわれは,重症三尖弁閉鎖不全症に対する開心術時に右側心膜欠損症合併が判明した1例を経験したので報告する.症例は79歳,男性.12年前に持続性心房細動の診断で抗凝固療法が開始された.2年前より労作時息切れおよび両側下腿浮腫が出現し,利尿剤内服が開始されるも増悪傾向であり,精査加療目的で当院紹介となった.精査の結果,著明な右心系の拡大に伴う重症三尖弁閉鎖不全症,中等症僧帽弁閉鎖不全症,永続性心房細動による心不全の診断となった.手術は三尖弁形成術 (Physio...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 52; no. 4; pp. 244 - 248
Main Authors 横田, 敦子, 谷口, 智明, 櫻原, 大智, 西村, 征憲, 矢野, 光洋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.07.2023
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Summary:心膜欠損症は稀な先天性疾患で,その診断は必ずしも容易ではない.無症状で経過し,他疾患に対する胸部手術の際に偶然発見される症例も多い.今回われわれは,重症三尖弁閉鎖不全症に対する開心術時に右側心膜欠損症合併が判明した1例を経験したので報告する.症例は79歳,男性.12年前に持続性心房細動の診断で抗凝固療法が開始された.2年前より労作時息切れおよび両側下腿浮腫が出現し,利尿剤内服が開始されるも増悪傾向であり,精査加療目的で当院紹介となった.精査の結果,著明な右心系の拡大に伴う重症三尖弁閉鎖不全症,中等症僧帽弁閉鎖不全症,永続性心房細動による心不全の診断となった.手術は三尖弁形成術 (Physio Tricuspid Annuloplasty Ring 28 mm+right ventricular papillary muscle approximation+anterior-septal commissure plication+neochordae reconstruction) +僧帽弁形成術 (Physio II Annuloplasty Ring 34 mm) +左心耳切除術を施行した.術中に右側心膜の広範な欠損を認め,右房は心膜欠損孔を経由し右胸腔内へ伸展していた.右側心膜欠損症を合併していたために右房の拡大を妨げる構造物がなく,著明に拡大した結果,重症三尖弁閉鎖不全症を引き起こしたと推察された.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.52.244