トラウマ,解離と摂食障害

はじめに:近年,摂食障害とトラウマや解離との関係についての報告が増えている。対象と方法:これらの関係について文献的に整理し,トラウマや解離を伴う摂食障害の適切な治療法について考察する。結果:神経性やせ症患者の約2割,神経性過食症の3~6割に心的外傷後ストレス症(posttraumatic stress disorder; PTSD)が合併しており,とくに過食症状とPTSDとの関連が強い。また,幼少期に虐待体験があると,約3倍摂食障害になりやすいという報告がある。トラウマから引き起こされる恐怖や怒りなどの否定的感情が,過食が多いほど強くなり過食のあとはしばらく安定することから,過食がひとつの感情...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本摂食障害学会雑誌 Vol. 3; no. 1; pp. 22 - 27
Main Author 野間, 俊一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食障害学会 05.10.2023
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN2436-0139
DOI10.50983/jjed.3.1_22

Cover

More Information
Summary:はじめに:近年,摂食障害とトラウマや解離との関係についての報告が増えている。対象と方法:これらの関係について文献的に整理し,トラウマや解離を伴う摂食障害の適切な治療法について考察する。結果:神経性やせ症患者の約2割,神経性過食症の3~6割に心的外傷後ストレス症(posttraumatic stress disorder; PTSD)が合併しており,とくに過食症状とPTSDとの関連が強い。また,幼少期に虐待体験があると,約3倍摂食障害になりやすいという報告がある。トラウマから引き起こされる恐怖や怒りなどの否定的感情が,過食が多いほど強くなり過食のあとはしばらく安定することから,過食がひとつの感情制御法になっていることがわかる。解離も感情制御のための病的な反応という側面をもっている。PTSDや解離を合併した摂食障害の治療としては,摂食障害とPTSDそれぞれの認知行動療法を統合する方法が試みられている。考察:いずれの治療でも大事なのは,まず安全で安定した治療環境を確立することである。
ISSN:2436-0139
DOI:10.50983/jjed.3.1_22