X線照射した臍帯血細胞で維持される組織修復能

幹細胞を用いた再生治療は,幹細胞の増殖能や分化能に影響されると考えられているが,この再生効果の分子的・細胞的メカニズムは十分に解明されていない.我々は最近,脳梗塞モデルマウスにおいて,造血幹・前駆細胞治療後にギャップジャンクションを介した小分子代謝物が血管内皮細胞へ速やかに移動することを見出している.そこで,造血能が完全に消失する15Gy以上のX線を照射した臍帯血細胞において,臍帯血細胞が有する組織修復能が維持されるかを調べた.本研究では,X線照射した臍帯血から調製した単核球をXR細胞とした.XR細胞では造血能は消失していたが,組織修復能は維持されており,XR細胞を投与した脳梗塞モデルマウスの...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 71; no. 1; pp. 53 - 65
Main Authors 田中, 光信, 赤松, 理恵, 入江, 與利子, 木村, 貴文, 瀧原, 義宏, 斉野, 織恵, 鍋谷, まこと, 田口, 明彦, 小川, 優子, 保井, 一太, 渕崎, 晶弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 25.02.2025
日本輸血・細胞治療学会
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ISSN1881-3011
1883-0625
DOI10.3925/jjtc.71.53

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Summary:幹細胞を用いた再生治療は,幹細胞の増殖能や分化能に影響されると考えられているが,この再生効果の分子的・細胞的メカニズムは十分に解明されていない.我々は最近,脳梗塞モデルマウスにおいて,造血幹・前駆細胞治療後にギャップジャンクションを介した小分子代謝物が血管内皮細胞へ速やかに移動することを見出している.そこで,造血能が完全に消失する15Gy以上のX線を照射した臍帯血細胞において,臍帯血細胞が有する組織修復能が維持されるかを調べた.本研究では,X線照射した臍帯血から調製した単核球をXR細胞とした.XR細胞では造血能は消失していたが,組織修復能は維持されており,XR細胞を投与した脳梗塞モデルマウスの脳機能は回復した.また,XR細胞投与後10分間でXR細胞からエネルギー源として供給される低分子代謝産物によって損傷した脳血管内皮細胞や血管周囲アストロサイトが修復され,梗塞部位の血流回復とそれに続く神経新生という治療メカニズムが考えられる.XR細胞は,細胞の自律的な再生作用を介するのではなく,新神経血管新生を誘発することによって,組織修復能力を発揮する可能性がある.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.71.53