住民に普及啓発すべき感染症 ―感染症診療に従事する臨床医を対象にしたデルファイ調査

目的:臨床医師の立場で考えた,一般住民が知るべき感染症および普及啓発の優先性を明らかにすること.方法:感染症指定医療機関において感染症診療に従事する医師26 名を対象にデルファイ調査を実施した.結果:「住民の知識の程度や意識・行動」および「臨床医学的・疫学的特徴と社会的状況」を選出理由として,HIV/AIDS(第1 位),結核(第2 位),インフルエンザ(第3 位)をはじめとする計24 疾患が選定された.上位3 疾患の得点は第4 位以下のそれと比較して2 倍以上であった.また,上位10 疾患のうち9 疾患は,先行研究で選出された行政機関の感染症対策担当者による上位10 疾患と一致した.考察:選...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 83; no. 1; pp. 12 - 18
Main Authors 石川, 直子, 柏木, 知子, 丸井, 英二, 堀口, 逸子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 01.01.2009
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi.83.12

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Summary:目的:臨床医師の立場で考えた,一般住民が知るべき感染症および普及啓発の優先性を明らかにすること.方法:感染症指定医療機関において感染症診療に従事する医師26 名を対象にデルファイ調査を実施した.結果:「住民の知識の程度や意識・行動」および「臨床医学的・疫学的特徴と社会的状況」を選出理由として,HIV/AIDS(第1 位),結核(第2 位),インフルエンザ(第3 位)をはじめとする計24 疾患が選定された.上位3 疾患の得点は第4 位以下のそれと比較して2 倍以上であった.また,上位10 疾患のうち9 疾患は,先行研究で選出された行政機関の感染症対策担当者による上位10 疾患と一致した.考察:選出された感染症は,輸入感染症対策や予防行動と早期発見の重要性を強く示唆しており,感染症診療に従事する臨床医の視点を反映した優先度と考えられた.感染症診療に従事する臨床医と行政機関担当者の間に認めた一貫性は,それら疾患の普及啓発の重要性を支持するが,一方で,これまでも予防の重要性が高い感染症と認識されてきたものが多いと考えられる.これは,これまでの普及啓発の方法とその質を見直す必要性を示唆するものと考えられた.今後,さらに対象とする感染症の種類を絞った優先度の選定が求められるだけでなく,具体的な普及啓発の提言やその評価が必要と考えられた.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi.83.12