各論5:本邦の移植施設における臓器摘出医・臓器移植医の時間外手当,その他のインセンティブに関して

「はじめに」本邦の移植は臓器提供数・移植件数こそ他の先進国に比べ人口比では少ないものの, 1997年の移植法の制定後には脳死臓器移植が可能となり, その後国民の移植医療に対する意識の変化と救急医療に関わる医療従事者の努力の成果により, 臓器提供数は徐々にではあるが着実に増加し, 終末期臓器不全の日本国民の救命と社会復帰に寄与してきている. 本邦の移植医療従事者は移植医療をさらに発展させ, より多くの終末期臓器不全患者が健康を取り戻すことへ貢献するため意欲を持って日々の診療に励んでいる. 一方で, 移植医療従事者の労働環境については十分に検討をされてこなかった. 労働環境, 補償を再考する上で,...

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Published in移植 Vol. 57; no. 1; pp. 101 - 108
Main Authors 日本移植学会, 働き方改革委員会, 渡邉, 龍秋, 小野, 稔, 福本, 巧, 笠原, 群生, 石田, 英樹, 岡田, 克典, 江川, 裕人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
日本移植学会
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Summary:「はじめに」本邦の移植は臓器提供数・移植件数こそ他の先進国に比べ人口比では少ないものの, 1997年の移植法の制定後には脳死臓器移植が可能となり, その後国民の移植医療に対する意識の変化と救急医療に関わる医療従事者の努力の成果により, 臓器提供数は徐々にではあるが着実に増加し, 終末期臓器不全の日本国民の救命と社会復帰に寄与してきている. 本邦の移植医療従事者は移植医療をさらに発展させ, より多くの終末期臓器不全患者が健康を取り戻すことへ貢献するため意欲を持って日々の診療に励んでいる. 一方で, 移植医療従事者の労働環境については十分に検討をされてこなかった. 労働環境, 補償を再考する上で, 臓器摘出手術, 脳死臓器移植手術が通常の各診療科の定期手術と異なる点を考慮する必要がある. 臓器摘出手術および脳死臓器移植手術は1) 臨時手術である, 2) 臓器摘出手術では摘出医は勤務先の病院以外の施設に赴き摘出手術を行いさらに臓器搬送を行うため, 時間的拘束が長く, 移動に伴う危険も生じる, 3) 各臓器の専門的トレーニングを修了した上で, 臓器摘出, 移植手術の手術手技習得の修練が必要である, 4) 臓器摘出手術時の臓器の最終評価が移植成績に直結する, 一方で移植が行われなかった場合, 臓器提供数の少ない本邦では移植待機患者の待機中死亡に直結するため, 摘出手術時のマージナルドナー臓器使用可否の判断に伴うストレスが高い.
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.1_101