多価不飽和脂肪酸は培養心筋細胞の細胞接着関連遺伝子のmRNA発現を促進する

多価不飽和脂肪酸は心筋の生理活性において重要な役割を有することが知られているが、心筋細胞の培養系で一般的に使用されている培地には脂質がほとんど含まれていない。先行研究によって、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びアラキドン酸(AA)の含有量が新生児ラット心筋組織と比較してラット胎児由来初代培養心筋細胞において極めて低値であることが明らかとなった。更に、DHA(20 μM)及びAA(50 μM)を培地内に単独添加した時、これらの脂肪酸含有量が新生児のそれに最も近づき、更に拍動収縮率が最大となった。本研究では、DHAとAAの培地内添加がmRNA発現と拍動力に及ぼす影響について検討を行った。その結果、脂...

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Published in生体医工学 Vol. Annual59; no. Abstract; p. 475
Main Authors 矢野, 瑞菜, 佐藤, 大介, 馮, 忠剛, 工藤, 智和, 梅原, 悠太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2021
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual59.475

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Summary:多価不飽和脂肪酸は心筋の生理活性において重要な役割を有することが知られているが、心筋細胞の培養系で一般的に使用されている培地には脂質がほとんど含まれていない。先行研究によって、ドコサヘキサエン酸(DHA)及びアラキドン酸(AA)の含有量が新生児ラット心筋組織と比較してラット胎児由来初代培養心筋細胞において極めて低値であることが明らかとなった。更に、DHA(20 μM)及びAA(50 μM)を培地内に単独添加した時、これらの脂肪酸含有量が新生児のそれに最も近づき、更に拍動収縮率が最大となった。本研究では、DHAとAAの培地内添加がmRNA発現と拍動力に及ぼす影響について検討を行った。その結果、脂肪酸を加えていない培養心筋細胞に対して、DHAとAAを培地内に単独で添加した培養心筋細胞において細胞接着に関わるmRNAの発現量が有意に高値となった。一方で、拍動力には有意な変化が見られず、培地内への脂肪酸添加による拍動力の向上は確認できなかった。以上から、ラット胎児由来初代培養心筋細胞において、DHAもしくはAAの培地内添加は拍動力の強化に直接的な影響を与えるのではなく、細胞間の接着を強く促進させることで拍動機能に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual59.475