キャリアについて悩む母親を対象とした ナラティヴ・セラピーの事例

本研究では,出産後にキャリアや過去の選択について葛藤を抱いた40 代女性との,ナラティヴ・セラピーの経過を精査した。クライエントは,仕事と育児の両立困難から,産後に退職し,さらに次の職場からの内定を辞退した。コミュニティーからの孤立感や,キャリア構築したいという強い思いから,内定辞退後に時間を空けずに再就職を選んだ。その結果,疲労や心理的健康を損なうこととなったため,精神科受診をして17回のナラティヴ・セラピー(1期から3期)が実施された。クライエントの語りは,女性にもキャリアを求めるディスコースと,育児の担い手としての伝統的な母親像を求めるディスコースによって影響を受けており,自分自身の選択...

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Published inキャリア・カウンセリング研究 Vol. 26; no. 2; pp. 47 - 56
Main Authors 岡田, 昌毅, 小金井, 希容子, 西松, 能子, 鬼頭, 諭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本キャリア・カウンセリング学会 31.03.2025
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ISSN2436-4088
DOI10.34512/careercounseling.26.2_47

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Summary:本研究では,出産後にキャリアや過去の選択について葛藤を抱いた40 代女性との,ナラティヴ・セラピーの経過を精査した。クライエントは,仕事と育児の両立困難から,産後に退職し,さらに次の職場からの内定を辞退した。コミュニティーからの孤立感や,キャリア構築したいという強い思いから,内定辞退後に時間を空けずに再就職を選んだ。その結果,疲労や心理的健康を損なうこととなったため,精神科受診をして17回のナラティヴ・セラピー(1期から3期)が実施された。クライエントの語りは,女性にもキャリアを求めるディスコースと,育児の担い手としての伝統的な母親像を求めるディスコースによって影響を受けており,自分自身の選択に価値を置けず,また人生の駒を進めることが困難になっていると理解できた。ナラティヴ・セラピーによって,クライエントは自分の状況を振り返ることができるようになり,ドミナントストーリーの矛盾に気づき,オルタナティブなストーリーが徐々に浮かび上がってきた。この結果から,ナラティヴ・セラピーは,現代女性が直面する困難な経験に対処する際に有用な介入となりうることが示唆された。
ISSN:2436-4088
DOI:10.34512/careercounseling.26.2_47