脳卒中発症前後の生活変化と心理状態との関連
目的:退院2か月後において,発症前との比較の中で生活の変化を把握し,この変化と心理的側面との関連を明らかにする.方法:調査対象者は,脳卒中発作のために入院した患者で,平成12年5月〜9月の間に歩行可能となって,自宅に退院した60歳以上の30名である.そのうち分析対象者は,退院約2か月後の時点において再入院していた者2名,調査拒否1名を除く27名である.調査方法は,退院約2か月後,調査者が自宅に訪問し質問紙による面接聞き取りを実施した.調査内容は,属性,心理項目,生活である.心理項目は,うつ,不安,意欲,満足度,孤独感とした.生活は,家庭生活という場における生活行動としてとらえ,岩崎らの高齢者の...
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Published in | 日本地域看護学会誌 Vol. 4; no. 1; pp. 95 - 99 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本地域看護学会
2002
Japan Academy of Community Health Nursing |
Subjects | |
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ISSN | 1346-9657 2432-0803 |
DOI | 10.20746/jachn.4.1_95 |
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Summary: | 目的:退院2か月後において,発症前との比較の中で生活の変化を把握し,この変化と心理的側面との関連を明らかにする.方法:調査対象者は,脳卒中発作のために入院した患者で,平成12年5月〜9月の間に歩行可能となって,自宅に退院した60歳以上の30名である.そのうち分析対象者は,退院約2か月後の時点において再入院していた者2名,調査拒否1名を除く27名である.調査方法は,退院約2か月後,調査者が自宅に訪問し質問紙による面接聞き取りを実施した.調査内容は,属性,心理項目,生活である.心理項目は,うつ,不安,意欲,満足度,孤独感とした.生活は,家庭生活という場における生活行動としてとらえ,岩崎らの高齢者の日常生活行動を参考にし,家庭内役割,文化的行動(趣味・生きがい),社会的行動(友達付き合い,訪問,外出),仕事とした.分析方法は,うつ,不安,満足度,意欲と,生活の変化との関連は,性・年齢を同時に調整し,三元配置分散分析を行った.孤独感の変化と生活の変化との関連は,性・年齢を同時に調整し,多重ロジスティック回帰分析を行った.成績:発症前と退院後の生活の変化では,家庭内役割,文化行動,社会的行動,仕事において10〜50%の者が減少していた.次に,生活の変化と心理的側面との関連を分析したところ,家庭内役割が減少した者は有意にうつ得点が高く,意欲得点が低かった.趣味・生きがいが減少した者は,有意に満足度得点が低かった,外出行動が減少した者は,有意にうつ得点が高く,意欲得点が低かった.訪問頻度が減少した者は,有意にうつ得点が高く,満足度得点が低かった.友達付き合いが減少した者は,すべての心理的側面との間に関連がみられた.仕事を喪失した者は,有意に意欲得点が低かった.結論:脳卒中を発症し,身体的に影響が少なく歩行可能な状態で退院した患者であっても,退院後,生活の変化と心理面が相互に関連し,一部の人々には生活の縮小をもたらす可能性が示唆された.このことから,歩行可能な脳卒中患者に対して,退院後早期からかかわり,生活が縮小しないサービスの提供や精神的支援が重要であることが改めて確認された. |
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ISSN: | 1346-9657 2432-0803 |
DOI: | 10.20746/jachn.4.1_95 |